サミットで燃料・食料への投機規制を打ち出すべきではなかったか?

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サミットで燃料・食料への投機規制を打ち出すべきではなかったか?

民主党参議院議員 藤末健三

7月8日にサミット首脳宣言が採択された。洞爺湖サミットの報道では「地球温暖化」ばかりにスポットが当たっているが、首脳宣言は8項目についてなされている。

つまり、1・世界界経済、2・環境・気候変動、3・開発・アフリカ、4・世界の食料安全保障に関するG8首脳声明、5・国際機関、6・政治問題、7・テロ対策に関するG8首脳声明、8・ジンバブエに関するG8首脳共同声明だ(http://www.g8summit.go.jp/doc/index.html 参照)。

世界経済に関する宣言

さて、筆者がもっとも興味を持っているが「世界経済」だ。

世界的なインフレが懸念される中で、どのような対策が打たれるかと、興味深く見ていたが、正直なところ失望を禁じ得ない(この仕事に従事された皆様には申し訳ないが)。

冒頭には『我々は、我々の経済の長期的強靭性及び将来の世界の経済成長に関し、引き続き肯定的である。我々の経済成長は緩やかになったものの、新興市場国は依然力強く成長している。(We remain positive about the long-term resilience of our economies and future global economic growth. Emerging market economies are still growing strongly though our growth has moderated.)』とあり、あまりにも危機感がない表現となっている。

例えば、「エネルギー価格の高騰」に関して、

『供給面では、短期的には生産量及び精製能力が増強されるべきである。中期的には、上流及び下流に亘る投資を拡大するためにも、共同の努力が必要である。産油国は、増加する世界の需要を満たすために必要な生産能力の増強に資する透明性があり、安定的な投資環境を保証すべきである。需要面では、エネルギーの多様化を追求するとともに、エネルギー効率を向上するための更なる努力が重要である。……我々はまた、商品先物市場の透明性の向上のための各国の関連当局の努力を歓迎し、関連当局の間の更なる協力を奨励する

といった対策しか書かれていない。なぜ、OPECに増産を求め、投機資金が原油先物市場に流れ込むことを規制すると書かなかったのだろうか?

これではあまりにもメッセージ性がない。

原油価格は、1バーレル140ドルを突破し、ゴールドマンサックスは200ドルまで高騰するとさえ予測している。

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この1年半で3倍近い高騰だ。このトレンドが続けば、日本経済だけでなく、世界経済へも悪影響が避けられない。米国でもガソリン価格高騰から、郊外型店舗の売り上げが急激に落ち始めているようだ。

世界の食料安全保障に関するG8首脳声明

また、食料問題についても独立した宣言文があるが、これは「途上国の食糧問題」に言及しているだけだ。

食料の高騰への対策については、『非食用植物や非可食バイオマスから生産される持続可能な第二世代バイオ燃料の開発及び商業化に向けた取組を加速し』とあり、また、『国際的に調整された、「仮想」備蓄システムを構築することの是非を含め、備蓄管理に関する調整されたアプローチについての選択肢を検討する』とある。

この点ではある程度具体的な方向性が示されている。

特に『農業生産性の年6.2%成長というCAADP(アフリカ農業総合開発戦略)の目標を支持し、CAADPの基準に適うアフリカ諸国における主要食用作物の生産量を、特に小規模農家の育成及び農村を含めた成長に重点を置きつつ、持続可能なかたちで、5年から10年で倍増するとの目標に向けて取り組み』というところなど、アフリカではなく正しく日本こそが対応すべき項目と思える

ただ、穀物への投機に対する規制には言及していない。筆者は投機規制を行わなければこの異常な燃料と穀物の高騰は終わらないと考えている。なぜ、投機への規制がかかれないのか?

現在、アメリカ財務省は、ゴールドマンサックス出身のポールソン長官と、彼がゴールドマンから連れてきた幹部に完全に乗っ取られたとささやかれ、欧州の政府機関に対しても民間金融機関が太いパイプを築いていると言われる。

こうした政府と金融機関の関係が、首脳宣言に影響しているとさえ思えてくる。

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(写真:日本雑誌協会)
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