幸か不幸か、65歳定年時代がやってきた! 企業の課題は現役世代との賃金バランス

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明治安田生命は、現在「エルダースタッフ」という名称で60歳以上の社員を再雇用している制度を改め、定年を65歳まで引き上げる方針だ。同社の平均年齢は2015年度末で約43歳。バブル経済の空気を引きずった1991~94年に入社した社員の割合が大きく、試算すると、20年後の2037年には総合職の社員数は今の約75%にまで極端に減少するという。

同社の永島英器執行役員人事部長は「うちの会社でいちばん人口ピラミッドの山が大きいのは40代。会社の成長力としては今は脂が乗っているといえるが、10年後は平均年齢が50歳以上の会社になってしまう。そうなってからでは、技術もさびつき、なかなか成長ステージに復帰できない。次の成長への準備に向けて今から手を打つべく、数年かけて検討してきた」と話す。

他社と同様、60歳以降に再雇用されて嘱託として働く場合、賃金は大幅に下がっていた。しかし、定年引き上げ後は60歳以降の処遇を大幅に改善する。「定年を引き上げると、現役世代が不利益を被るという意見が出るが、それほど会社の負担を増やさず、かつ現役職員の処遇も下げないように、工夫しながらやっていく」(永島氏)。現在、約7割の人がエルダースタッフとして再雇用で働いているが、2019年4月以降は退職金をもらわずに65歳まで働く人が約9割に増えると想定している。

高年齢者の役割や業務の幅を広げる

エルダースタッフの職務範囲は限定的で、営業そのものではなく、高齢顧客の自宅を訪問して確認活動を行うなど、顧客サービスの分野で働くことが比較的多い。2019年4月の定年引き上げ後は、「現場の第一線の支社長や営業所長などにもなれる。定年引き上げを機に制度を設計し直す」(永島氏)。

さらに、定年引き上げに合わせ、「もう一段ギアチェンジできるように、中高齢者向けの教育研修に力を入れていく」と永島氏は強調する。研修内容はこれまで、マインドセット(意識形成)を促すものが多かったが、スキル(技術)のブラッシュアップもありうるという。

50歳代半ばで部長職や支社長職を降りると、関連会社に出るケースが多く、かつ片道切符(転籍)が中心だった。定年引き上げ後は、関連会社への出向、人事交流策など、人事制度を幅広く見直す必要が出てきそうだ。

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