「ごちそうさまでした」に込もる懺悔と感謝 「いただきます」も同時に考えてみよう

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このような背景から、一般的に表現される「ごちそうさまでした」の英訳は、日本語の意味に合致しているように思えます。

「ごちそうさまでした」の英訳に学ぶ

しかし、私はどうも通常の英訳に寂しさを感じずにはいられません。なぜならば、これらは食事を摂取できたことご縁への感謝の気持ちにフォーカスされ、そのご縁の中身には触れることなく、表面的な意味しか表現されていない気がするからです。

ここで注目したいのが、食前の言葉である「いただきます」の解釈です。「いただきます」を「いのちをいただきます」と意訳すると、「ごちそうさまでした」の意味は、それに対応して「いのちをいただきました」となり、英語では「I had your life」となります。また、「いただきます」に含まれる懺悔と感謝の深意を抽出して、「多くのいのちを奪ってしまい、申し訳ありません。有難くいのちを頂戴いたします」と解釈すると、「ごちそうさまでした」は「多くのいのちを奪ってしまい、申し訳ありませんでした。有難くいのちを頂戴いたしました」という意味となり、「I am so sorry for taking your life and am greatly appreciate to have been able to have your life」と英訳できます。

つまり、「いただきます」の解釈によって、「ごちそうさまでした」の意味も変化するということです。「いただきます」の解釈が深ければ深いほど、それに比例して「ごちそうさまでした」の解釈も深くなり、英訳した際に人間の内面を表現されるようになります。この二つの言葉はワンセットであることに改めて気が付かされました。

英訳することで、何を思い「ごちそうさまでした」という言葉を口にすべきなのか明確にすることができました。ついつい忘れがちな食後の言葉、「いただきます」とともに、大切にしたいと思います。

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大來 尚順 浄土真宗本願寺派僧侶

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おおぎ しょうじゅん / Shoujun Oogi

1982年、山口県生まれ。浄土真宗本願寺派僧侶でありながら、通訳や翻訳も手掛ける。龍谷大学卒業後に単身渡米。カリフォルニア州バークレーのGraduate Theological Union/Institute of Buddhist Studies(米国仏教大学院)に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。帰国後は東京と山口県の自坊(超勝寺)を行き来しながら、僧侶として以外にも通訳・翻訳、執筆・講演などの活動を通じて、国内外への仏教伝道活動を実施。翻訳著書も多数出版する傍ら、初級英語で仏教用語をやさしく解説した「英語でブッダ」(扶桑社)も非常に好評のほか、「お坊さんバラエティ ぶっちゃけ寺」(テレビ朝日系列)にも出演。
 

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