新宿の京王百貨店「シニア戦略」を変えた理由 「新シニア層」を取り込み、売り上げプラスに

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そこで京王百貨店は新宿店の改装に動きだした。狙いは2つ、客層の拡大とシニア戦略の強化だ。

1階にオープンした「ロレックス」(記者撮影)

2016年12月、1階メインエントランス横という百貨店の顔ともいうべき場所に、海外腕時計の「ロレックス」がオープンした。以前は化粧品売り場だった場所だ。新宿という地の利を生かし、「12月、1月の2カ月で同店の時計のオーバーホール件数は日本一になった」(広報)。オーバーホールとは中古品を分解し、清掃・再組み立てを行い新品状態に戻すこと。ロレックスユーザーという上客をつかんだことで、今後の高額品販売に期待が持てる。

元あったロレックスが抜けた6階の時計売り場では「セイコー」「シチズン」など国産ブランドの強化を行った。「カシオ」コーナーでも「G-SHOCK」「BABY-G」など人気ブランドのラインナップを拡充。こちらは若い世代を中心とした客層の拡大をもくろむ。

ロレックスの出店に合わせ、1階の化粧品売り場にも改装を施した。スキンケアブランドを強化したのだ。肌をよい状態に保つスキンケアはとりわけシニア層の関心が高い。が、肌の状態によって手入れ方法が変わるためカウンセリングが不可欠でもある。シニア向けに始めた店頭でのカウンセリング体験であるが、40~50代への訴求も狙っている。

本丸のシニア売り場もリニューアル

8階のレストラン街も2016年3月にリニューアルオープンした。仕事帰りの夜需要を取り込むべく、個室や半個室の数を増やしたほか、アルコールメニューの強化にも取り組んだ。こうした施策の結果、2016年4~11月に前年比マイナスが続いた新宿店の店頭売上高は、12月、1月、2月と3カ月連続で前年同月比プラスとなった。

3月16日には、2~4階の婦人服売り場が改装オープンする。4階には同店の象徴ともいえるシニア向けが集積。「衣料品は伸び悩んでいるが、雑貨と化粧品は堅調に伸びている」(広報)ことから、ほかのフロアの売り場からステッキ、ウィッグ、バッグなどの雑貨を移し、エイジングケアやサプリメントなどの店舗もオープンさせた。その結果、雑貨や美容・健康の売り場シェアを4%から14%へと大きく広げた。

また、40~50代がターゲットの3階では管理職など働く女性向けのファッションを強化した。さらに若い世代向けの2階は、やはりオフィス向けファッションを強化するとともに、4階と同様に非衣料シェアを2割から3割へ引き上げた。

2020年以降には小田急やJR東日本も含めた新宿西口再開発という大型プロジェクトも控え、完成すれば新宿西口の装いは一新される。変化の激しい時代の中で京王百貨店は生き残りを懸けた模索を続ける。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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