「27歳男性」が高齢者向け不動産を扱う事情 「年寄りだから借りられない」のはおかしい

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R65不動産を立ち上げた山本遼氏。千葉県山武市のむすびの家のお茶の時間にて(写真:筆者撮影)

高齢者の住宅問題なんて、自分には関係ないと考えている人は少なくないだろう。だが、この問題が解消されなければ困るのは現在の20~40代である。住宅・土地統計調査を見ると、住宅を取得している人は、1970年代には25~29歳で3割弱、30代で半数以上、40代では7割いたが、2013年になると25~29歳で1割強、30代で4割弱、40代で6割弱に減っている。

この背景には、結婚年齢の上昇や、それに伴う第1子出産年齢の上昇などで住宅を取得する年齢が上がっていることに加え、住宅価格の高騰や年収の伸び悩みなどさまざまな要因が考えられる。いずれにしても住宅を買う気にならない人、買える状態にない人が増えているのである。

子どもと住んでいる高齢者は約4割に低下

一方、2014年の国税庁民間給与実態調査結果を見ると、年収が増えるのは50代前半まで。つまり、30代で30年、35年にも及ぶ住宅ローンを組むと、年収が減る60代にローンが残るなどリスクがある。20代なら何とか踏ん張れるだろうが、40代なると危険度が増す。現在、何らかの理由で住宅を買っていない20~40代のうちには、今後も住宅を取得しないまま高齢化し、賃貸に住み続ける人が少なからずいるだろう。

さて、「高齢者は部屋を借りにくい」という問題は、私が30年以上前に不動産にかかわり始めた頃からあった。それでも当時は高齢者の割合は低く、独居老人は少なく、建物老朽化で立ち退きを迫られる例もあまり聞かなかった。しかし、そこから30年経った今、65歳以上が総人口に占める割合は27.3%と過去最高になった。1980年に7割以上だった子ども世帯との同居率は、2014年には約4割にまで下がり、独居老人も急増している。

近年の空き家の増加などを考えると、問題が解消に向かってもよさそうなものだが、国交省が2015年12月に行った家主約27万人に対する調査によると、家賃の支払いや居室内での死亡事故などへの懸念から7割の家主は高齢者の入居に拒否感があると回答している。

そんな中、高齢者の賃貸居住に関し、新しい動きが少しずつ出始めている。ひとつは高齢者自らが自分にとって住みやすい住宅を造るという動きだ。

具体的には高齢者入居が可能なことはもちろん、入居者だけではなく地域の人たちも利用できる共用スペースがあり、多世代が交流できるシェアハウスタイプの住宅で、2014年3月に世田谷区に誕生した「笑恵館(しょうけいかん)」が端緒。家族だけで孤立して老後を過ごすのではなく、入居者や施設利用者とのつながりをベースに、互いに支え合う暮らしをイメージしているという。

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