トランプは米国憲法を学び直した方が良い 就任早々連発の大統領令は建国精神に反する

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25年以上前に冷戦が終結して以来、米国外交の最優先目標は、世界に民主主義を広めることだった。だが、この野心を追求するに当たり、米国は時に傲慢になり、特定の国々に対して軍事力を使って強制的に民主主義を押し付け、怒りを買った。

その一例がイラクである。民主主義実現への第一歩として自由選挙を行わせた結果、政治的な分裂が加速する羽目になった。民主主義が定着していない国で、そうしたものを導入することの難しさを露呈させた。

数年前、私はバルカン諸国のある指導者と話した。彼は、自国が民主的な欠点を抱えており、改革が必要だと指摘されているが、そうした助言に従うことには政治的な苦痛が伴うと語り、「私はどうしたらいいのか?」と尋ねてきた。

この指導者は、民主主義的な改革を進めるよう人に言うことと、改革によるリスクや責任を実際に負うのとは、全くの別物だと主張した。

トランプ以前から露呈していた問題点

現時点の政治情勢は有害ではあるが、米国には依然として、歴史上最も成功した民主主義が存在している。確かにそれは素晴らしいモデルなのだが、世界全体に強制されるべきではない。他国が米国のようにならねばならないと人々を説き続けるのは、健全な戦略ではないのだ。

リベラルな民主主義は、トランプ氏が勝利する以前に、すでにバランスを欠いていた。現在は重心を失っている。今後の4年間は、トランプ政権がもたらした暗い時代として記憶されるだろう。

だが、リベラルな民主主義が過去に、ライバルとなる思想を圧倒してきたのも事実であり、再びそうなるだろう。民主主義を守るために激しく戦ってきた人々には、それを確実にする準備ができている。

週刊東洋経済3月18日号

クリストファー・ヒル 米デンバー大学コーベル国際大学院長

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Christopher R. Hill

米国の元東アジア担当国務次官補。近著に『Outpost』。

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