世界で日本ビジネスの存在感が減退するワケ 「日本エリートはズレている」の著者に聞く

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もう一つ、人は評価を見て動くものであり、「本社ばかり見ず、海外で営業する人」を評価するシステムにすれば、その方向に進む。今は逆になっている。UAEや中国では、日本よりも国際派人材が重用され、知へのリスペクトがあると感じる。各企業や経済界、教育界、政府などで戦略が必要だが、その前に、世界の実態として、日本が諸国との競争の中のワンノブゼムであることに気づくのが第一だ。

――著者は国力を重視し、「中国の子どもは日本の2倍勉強する」と教育強化をうったえる。同時に傲慢を戒め、「世界の中の日本」を強調している。

国力というのは政治家や役人の点数稼ぎでなく、次世代の幸不幸を現実に左右する。日本は自信喪失が他国への反感、傲慢と結合してしまった。自信とプライドを持つべきだが、「日本がイチバン!」と叫び、他国の失態を見て上から目線をキープし安心するのは、少し違う。内向きや独善、視野狭窄では贔屓の引き倒し、日本の足を引っ張る。

愛国心も国際性もどちらも弱い

「愛国心という骨」と「国際性という翼」が相まって国は伸びると思う。世界各国との比較で言えば、日本はどちらも心もとない。この15年間ほどは国際性の低下が目立つ。国力増強の方向に効率よくまわっていない。

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――世界が「接戦の時代」に入った、と書かれているが、この真意は何か。

1980年代以降、先進国との差を縮める途上国が相次いで現れた。今世紀に入り、逆に先進国は苦しく、新興国や資源大国が有利な状況もあった。だが、油価低落などこの2年強で、「資源バブル」がはじけた。どの国もみな苦しく、どの国もチャンスがある。技術や資源、市場規模どれも、他を圧倒する決定打ではなくなった、つばぜり合いの「接戦の時代」。課題をとらえて、改革していけるか否かが、その国の明暗を分ける。

接戦を制するには多面的な国力が関係する。軍事安保に加え、学術や文化、技術、国際性、外交力などのソフトパワーがカギだ。海外への関心、外国への人の派遣・プレゼンス・ネットワーク、知的なものへのリスペクト。日本はここを強化しなければ、勢いが低下していくだろう。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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