世界で日本ビジネスの存在感が減退するワケ 「日本エリートはズレている」の著者に聞く

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――中国と韓国とは感情的な対立が生じ、それが乗じて両国の企業には負けない、負けていないと見る日本人も少なくはない。

外交安保での指摘は(中韓に)しっかりすべきだが、中韓の欠点だけ見て悦に入っているとすれば、厳しいのでなくて、甘いのだ。単純すぎる。現地への食い込みは韓国が積極的。中国は国営企業が典型だが、財布(予算)が大きく、世界規模で展開している。中東のある国で「中国企業の方が日本より仕事熱心でスピードもあり魅力が大きい」との声もある。各国に住む人の数でも大きな差がある。

中国社会の「いい加減さ」や、サムスン電子、大韓航空のスキャンダルだけを見て、安心する日本になっていないか。世界でのビジネス拡大は、彼らの努力がまさる面がある。上から目線でいるうちに他国に後れをとり、世界の実態認識も自己イメージもズレていないか。これでは日本の力が弱まる。

他国のスキャンダルを見て安心する愚

――中東ビジネスについては、日本企業のプレゼンスが大きかった時代があるが、現在はどうか。

1970年代にイラン、イラクなどで日本企業は強かったが、相次ぐ戦乱や混乱で縮小・撤退した。その間、欧米が巻き返し、また1990年代末から中韓が急に伸びてきた。ドバイで開催される巨大な各種ビジネスイベントで、日本企業のプレゼンスが非常に小さく、ショックを受けた。中国やドイツ、英国は、企業数も展示面積も、日本の10~30倍。フランスやイタリア、韓国が日本の4~10倍。台湾やブラジル、トルコも、日本よりずっと大きい。UAEや中東には日本へのリスペクトがあるが、日本はそこにあぐらをかいて、シェアやプレゼンスが低下してしまった。

――日本の中東イメージが「戦乱、テロ、対立」と否定的・一面的すぎることも作用している。

私もそうだった。ドバイに来て驚いたが、ここは日本社会のはるか前を行く、グローバルビジネス社会だ。イスラム教のスンニ派もシーア派も、キリスト教もヒンズー教も、みな同じ職場で協力して、流暢な英語を駆使して働いている。外国留学経験者が非常に多く、世界をよく知っている人たちが各国とネットワークを築いている。逆に、日本は世界の実態を知らず、腰が引けている。

日本は「自分だけが努力している」「本物は日本だけ。他はずるいかラッキーなだけ」かのような錯覚があるようだ。国づくりでもビジネス拡大でも、他国の方が汗をかき、努力していることは多い。物まねや石油だけで、ここまで来たわけではない。UAEにも課題はあるが、日本の中東イメージはあまりに一面的すぎる。

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