安倍首相夫人が「私人」とは言えない根本理由 活動を自重する様子を見せていないが・・・

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「土曜日に(職員が)行っていたので、最初は私的なものかというふうに考えたが、別な行事との連絡調整として(昭恵夫人に)付いていくこともありうるということで、あわせて検討して後で調べた結果、公務ということで整理した」

3月7日の民進党のヒアリングで内閣官房の参事官は、玉木雄一郎議員の質問に対してかなり苦しそうに説明した。

「事務方は初めから、昭恵夫人への随行を公務と見なしていたに違いない。しかし安倍首相が最初に『妻は私人だ』と言ってしまったものだから、それにあわせて急ごしらえで、随行も“私的活動”としたのだろう。ただそれでは職員が事故にあった場合は労災適用もできないなど、数々の問題が生じてしまう。よってやむをえず、見解を訂正したのだろう」

玉木氏はこう述べるとともに、実際に随行した職員には時間外手当が支払われていた事実も明かしている。

総理夫人という肩書は、絶対的な効力を持つ

すなわち昭恵夫人が「私人」であるとすると、いろいろな矛盾が生じてしまうのだが、それでもなお政府は、昭恵夫人が「公人」であると認めようとしていない。これについて現在の官邸の認識不足を、民進党の江田憲司代表代行が同党のヒアリングで再三指摘している。

「総理夫人という肩書は、絶対的な効力を持つ。それを利用しようという団体や会社の思惑に乗ってはいけない。従来の官邸ならきちんとチェックしたはずだが、今の官邸では誰も判断していないのか。それなら危機管理として大きな問題だ」

確かに専属職員が2人も付いていて、講演先のチェックができなかったというのは不自然だ。さらに不思議な点は、総理夫人の担当が2人とも経済産業省出身である点だ。

通常なら他の官庁も手を挙げていいはずだが、経済産業省が必ず独占しなければならない必要があったのか。そこに安倍内閣の“闇”があるかもしれないと、野党は注目している。

さてこのような官邸の苦悶をよそに、昭恵夫人は3月8日の国際女性デーイベント「HAPPY WOMAN FESTA 2017」のオープニングセレモニーに出席するなど、活動を自重する様子を見せていない。それどころか、「私に注目していただいて、その活動に注目していただく。それが私の役割なのかな」と発言するなど、ますます「昭恵カラー」を色濃く打ち出している。

それほどの影響力のある総理夫人が、はたして私人といえるのか。それでも安倍首相が私人にこだわるなら、まったくの不可解だ。だがそもそも昭恵夫人自身が、不可解な存在なのかもしれない。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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