住宅ローンの借り手も条件も限界にきている 追い詰められた銀行の住宅ローン狂想曲

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銀行の住宅ローン貸し出し競争にあおられていませんか(写真:Jazzman/PIXTA)

昨年、銀行の住宅ローンの残高が初めて120兆円を突破した。この10年間で約3割、30 兆円の増加である。背景には主要国で一二を争う"借りやすさ"がある。頭金の割合は物件価格の2割が一応の基本とされているが、場合によっては100%を超える借り入れも可能だ。期間の面でも最近は最長50年まで借りられるなど、世界最長のスウェーデンに次いで長い借り入れができる。住宅ローン残高の1%分税額控除を受けられるという税制メリットもある。

これらの恩恵で、日本では低所得者でも住宅ローンが借りやすくなっている。しかしその結果、住宅ローンを借りている低所得者層のうち63%もの人々が、月々の住宅ローンの支払いに可処分所得の4割以上を費やしているのが実情だ 。貸し出しの増加率はもっと高い国もあるが、この低所得者の返済負担率はOECD(経済協力開発機構)主要国の中で最も高い。消費者ローンの借り入れ理由の上位に、「住宅ローンの返済」なども顔を出す。このような住宅ローンは持続可能なのか。

実行額急増でも喜べない銀行

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1970年代に民間銀行の住宅ローンが本格化して以来、住宅ローンの競争は徐々に激しくなってきた。2003年に東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)が「金利1%」の固定金利のキャンペーンを実施し、当時の竹中平蔵金融担当相がりそな銀行から東京三菱に借り換えたことで話題になった。しかし、2011年以降は、金利1%を切るローンは当たり前になった。

低金利競争に追い打ちをかけたのが昨年2月に導入された日本銀行のマイナス金利政策である。昨年後半から若干上昇ぎみだが、それでも最優遇金利は、当初10年間固定金利で0.5%、変動で0.45%と超低位にとどまっている。

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