冨田真由さん刺傷事件、判決は軽すぎたのか 刺したファンの男に懲役14年6月

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――では、今回の懲役14年6月という判決は?

これを前提としますと、本件の「懲役14年6月」という判決は、放火や爆弾使用等を伴うケースに近い量刑ですので、かなり重い部類の判決になります。

過去には殺人未遂で「無期懲役」の例もあるが…

――犯行の内容からすると、軽すぎるという意見もあるが?

量刑を判断する際は、「犯行に至る動機、犯行の計画性、犯行の態様、犯行の結果(被害者の人数、被害の程度)、被害回復の有無、被害者の処罰感情、被告人の反省の有無・程度、前科・前歴の有無・内容」といった複数の要素を総合勘案しつつ、「過去の同種犯罪に対する刑罰との均衡」を加味して判断されます。そのため、国民感情がそのまま量刑に反映されることは少ないと思われます。

この点、今回のような「裁判員裁判」においては国民感情を反映することも期待されています。しかし、その場合でもやはり「過去の同種事案における判決」が判断指標として用いられますので、今回の事件においてのみ国民感情を殊更に重視して量刑相場を極端に逸脱した判決になる可能性は低いと思われます。

なお、過去に殺人未遂罪で無期懲役の判決が下された事案が「元日本赤軍メンバーによるテロ事件」であることからしますと、本件において無期懲役の判決を下すことはやはり難しいのではないかと思われます。

德永 博久(とくなが・ひろひさ)弁護士
第一東京弁護士会所属 東京大学法学部卒業後、金融機関、東京地検検事等を経て弁護士登録し、現事務所のパートナー弁護士に至る。職業能力開発総合大学講師(知的財産権法、労働法)、公益財団法人日本防犯安全振興財団監事を現任。訴訟では「無敗の弁護士」との異名で呼ばれることもあり、広く全国から相談・依頼を受けている。
事務所名:小笠原六川国際総合法律事務所

 

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