本気で炭素離れするなら突破口は宇宙発電だけだ−−茅陽一・地球環境産業技術研究所長

本気で炭素離れするなら突破口は宇宙発電だけだ−−茅陽一・地球環境産業技術研究所長

低炭素社会は既存技術の延長線上にはない。社会を根本的に作り替えるための技術開発の方向性を日本の第一人者に聞いた。

--温暖化対策は、何を目標として進めるべきでしょうか。

対応がのんびりでいいとは誰も思っていない。ただ現実には、できる範囲のことをするしかない。温暖化の影響にもいろいろな段階がある。大事なのは、取り返しのつかない、非可逆的な影響を抑えることだ。

よく心配される、北極の氷が解ける、あるいはグリーンランドの氷床がなくなるといった事態は相当な温暖化でないと起きない。少なくとも今、われわれが議論しているような範囲の温度上昇なら起こらない。

EUは気温上昇を2℃に抑えることを目標にしているが、現実には無理だ。1996年にEUが言い出したころは、大気中のCO2の濃度が自然のレベルの約2倍、550ppmになると気温が2℃上昇するとの想定だった。ところがIPCCの最新のリポートでは、現在の380ppmの濃度でも2℃上がってしまうとされている。3℃程度の上昇で止めるといった目標のほうが、まだ現実的だ。

EU、さらに日本政府も、地球全体でのCO2の排出を2050年に半減させるとしているが、途上国の経済成長を考えれば現実には無理。その時点で現在と同じ程度の排出に抑え、その後下がっていくというのが精いっぱいではないか。

現在、先進国と途上国の排出量は6対4くらい。30年には途上国のCO2排出は現在の3倍になるといわれている。仮に先進国がゼロにしても、半減は無理だ。途上国には省エネを一所懸命やってもらうしかないが、それだけではすまない。

--もう少し現実的な目標が必要ということですか。

そのとおり。ターゲットがあまりにも政治的に決められすぎて、現実性を無視している。EUが言っている「50年に6割から8割削減」というのは、あまりにも実現可能性を無視している。「福田ビジョン」でも、それを踏襲するようなことだけは言ってほしくなかった。

福田ビジョンでいう低炭素社会を実現するには、実際にはほとんどCO2の排出のない社会にしないといけない。産業革命以前のレベルということだ。本来、自然の吸収とバランスを取るためには、現在の20分の1とか、30分の1くらいまでCO2の排出を削減する必要がある。本当の意味で低炭素社会をつくるならば、「半減」どころか、そのレベルまで下げるつもりで長期的な対策を講じる必要がある。

--エネルギーの根本的な転換が必要になりますね。

究極の目標は炭素離れなのだから、非化石燃料の開発を本気でやらなければだめだ。

エネルギーには原子力と自然エネルギーと化石燃料しかない。ここで問題なのは、自然エネルギーが抱える限界だ。

バイオマスは植物を燃やす、あるいは植物を燃料に転換するということだから、どうしても限度がある。太陽エネルギーの変換器としての植物は効率が非常に悪く、クロレラのように非常に効率の高いものでも熱変換効率が3・5%といったオーダーだ。

太陽光、風力は気候と時刻によって、不規則に出力が変わる。こうした自然エネルギーと原子力だけでは、現実の電力需要に対応できない。設備コストの高い原発は一定の出力で運用することが最も経済的で、変動運用は現実的でない。

結局、そうした需要変動には化石燃料を使った火力発電で対応するしかない。自然エネルギーと原子力を増やすと、非常に大きな火力電源設備がいるという皮肉なことになる。

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