個人の「働き方改革」では生産性は向上しない

日本の労働生産性を低下させている構造問題

労働生産性が高い製造業と労働生産性が低いサービス業における労働生産性と就業者数の変化を見ると、1970~89年とそれ以降とで傾向が大きく異なる。横軸に労働生産性、縦軸に就業者数をとって変化を見ると、製造業とサービス業はともに1970~89年は右上がりの傾向があったものの、1990年以降の製造業は右下へ、サービス業は左上へ動いている。

この図では右上がりの傾向は労働生産性が改善しながら雇用が増えていることを示し、望ましい動きである。1970~89年では、程度の違いはあるものの両産業ともに右上がりの傾向にあった。一方、右下がりは労働生産性が改善しているにもかかわらず雇用が減少していることを示す。雇用を減らすことで労働生産性を高めてきたといってもよいだろう。左上がりは労働生産性が下がりながら雇用を増やしている状態を示すため、サービス業では過度に雇用の増えている可能性がある。

需要が産業構造の変化を引き起こしている

過去15年(2002年~17年)の業種別の就業者数によると、最も就業者数が増加した業種は「医療、福祉」のプラス74.0%だった。高齢化社会におけるニーズの増加が明らかに影響している。一方、最も減少した業種は「農業、林業」のマイナス24.1%である。これらも高齢化による後継者問題などが課題の業種である。いずれの業種の変化を見ても、生産性の高い業種に雇用が集まったわけでもなければ、逆に生産性が低い業種で淘汰が起きたというわけでもなさそうだ。

最近では「第4次産業革命」によって、AIにいろいろな業種の雇用が奪われるといった議論があるが、実際には社会における必要性が産業構造の変化を生じさせる可能性が高い。日本の場合、生産性を引き上げることが難しい介護・医療などサービス業の需要が今後も増加するだろう。

安倍晋三首相は1月4日の年頭記者会見で、「金融政策、財政政策、そして成長戦略の3本の矢を打ち続けてまいります」と話した。だが、生産性の伸び率低下に伴う長期の課題の解決は困難なため、今後もこれまでどおり金融政策と財政政策に傾斜した短期的な政策運営が、続きそうだ。 

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