「アクア」と「ヴィッツ」は何が似て非なるのか トヨタが小型ハイブリッド車を並べる理由

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トヨタにとって、アクアとヴィッツとでは、目指す方向性が異なる。

1999年に初代が発表されたヴィッツは、トヨタの欧州戦略車という位置づけも込められていた。デザインはトヨタが南仏ニース郊外に開設したばかりのスタジオで、ギリシア人デザイナーの手で描かれた。「ヤリス」という名前を与えられた欧州仕様は、フランス北部のヴァランシエンヌに新たに作られた工場で生産された。

日本ではその後、ベストセラーカーに君臨していたこともあるので、国内マーケットを重視して開発された車種だと思っていた人がいるかもしれないが、実は欧州でのトヨタの評価を高めるために生まれたコンパクトカーだったのだ。

マイナーチェンジ前のヴィッツ

今回追加されたハイブリッド仕様車に関しても、欧州版ヤリスでは5年前の2012年から販売されている。 同じように欧州戦略車として送り出されたオーリスも、やはりハイブリッド車は日本に先駆けて設定していた。これをマイナーチェンジと同時に日本にも導入したのである。

ほかのコンパクトカー、アクアとパッソは

一方、2011年に登場したアクアは、日本国内のほか北米市場を重視して開発された車種だ。こちらも日本と北米では車名が異なっており、現地では「プリウスC」と呼ばれている。つまりプリウスファミリーの一員となっている。

トヨタのコンパクトなハッチバックとしてはもう1車種「パッソ」もある。こちらは以前からダイハツ工業「ブーン」の兄弟車という関係であり、昨年登場した現行型では開発から生産までをダイハツが一貫して担当し、トヨタにOEM(相手先ブランドによる生産)供給する格好になっている。

パッソ自体は国内専用車だが、ダイハツ版ブーンは「シリオン」という名前で東南アジアなどでも販売されていた。昨年末、トヨタとダイハツは新興国小型車カンパニーを設立し、新興国向け小型車の製品開発は基本的にダイハツが担当することになった。今後はパッソ/ブーンをベースとした新興国向け車種がここから送り出されることになるだろう。

現行型ヴィッツは一般的なアナログメーターを置く

つまりトヨタがコンパクトカーのジャンルに用意している3種類のハッチバック、ヴィッツ、アクア、パッソは、日本以外に欧州、北米、新興国向けという、異なるマーケットを見据えて開発された車種であり、それらをすべて日本でも販売しているという状況なのである。

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