従業員への「罰金」はいったい何がマズいのか セブン加盟店とビッグモーターで問題浮上

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第1の条件は、罰金制度が「就業規則」に定められていることである。

労働基準法第91条の冒頭が「就業規則で」と始まっているとおり、就業規則に定められていない罰金制度は違法である。「こういうことをしたら罰金を受ける」という予見可能性が無ければ従業員には酷なので、労働基準法は、就業規則によって罰金の対象となる違反行為を明確化することを求めているのである。

「うちの会社は就業規則が無いのに、罰金制度がある」という場合は、違法な罰金制度が運用されていると疑っていいだろう。

2つ目の条件は罰金の目的

第2の条件は、罰金の目的が「企業の秩序維持のため」であることである。

労働基準法第91条では、罰金のことを「減給の制裁」と称している。これは、本条において法が認めている罰金制度は、その目的が損害賠償のためのものであってはならず、始末書や出勤停止のような他の懲戒処分と同様、従業員を「制裁」し、企業秩序の回復を図ることを目的とするものでなければならないという意味である。

より具体的に言えば、たとえば、会社の備品を重過失により壊してしまった従業員に対し、「次からは同じ失敗をしないように気をつけなさい」という意味で罰金を科すことは合法だが、「備品を壊した損害賠償金に充当する」という意味で罰金を科す場合は、労働基準法第16条の「損害賠償額の予定」に該当し、違法になる。ただし、罰金制度とは別問題として、会社が従業員に対し、実損額に基づいて民法上の損害賠償請求を行うことは差し支えない。

第3の条件は、罰金が賃金から天引きされる形で徴収されることである。

これも「減給の制裁」という言葉から導かれるのだが、「減給」とは、「本来支払われるべき賃金からの控除」であり、従業員の財布から現金で徴収するような罰金制度は違法である。

たまに見かける罰金を入れる貯金箱も、たとえば「遅刻をしたらここに500円入れなさい。貯金箱がいっぱいになったら皆で飲みに行きましょう」というのは遊び感覚としては面白いかもしれないが、法的には違法なのである。

次ページ第4、第5の条件
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