「たくさん集めて落とす」新卒採用が変わる 学生が企業を逆面接?

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学生全体に大きな網をかけるのではなく、最初から母集団を絞り込む方式としてもう一つ注目されているのは、「新卒紹介」だ。これは中途採用で主流だった手法の“新卒版”で、エージェントが学生と企業からそれぞれの希望やニーズを聞き取り、引き合わせる。企業は大量のエントリーから絞り込んでいく手間やコストを節約できる。

一方、学生にとっても就活に時間を割けない理系や体育会系を中心に評判は上々だ。手当たり次第エントリーするより有望な企業に出合える確率が高い、というわけだ。費用は「成功報酬制」で採用が決まってから企業が支払うが、これまで中途に比べて半額以下だった新卒紹介の報酬が、ニーズの高まりを受けて上昇。エージェント側も力を入れ始めた。

自前の「リクルーター」

今年は「働き方」への関心が高まっている(写真:堀内慶太郎)

大手就活サイトは多くの情報が見られる一方で、学生の目は目立つ企業に向きがちだ。2017年卒の大卒求人倍率(リクルートワークス研究所調べ)を見ても、従業員300人未満の企業では4.16倍と「求めているのに集まらない」状況であるのに対し、5千人以上の企業は0.59倍。大企業への人気集中が続いている。今年3月1日時点で、大手サイト3社の掲載企業数は昨年の1.2倍。前出の谷出さんは「エントリーがこれまで以上に分散し、認知度の低い企業は母集団形成に苦戦するだろう」と指摘する。そんな中、埋もれないための対策も始まっている。

「私たちのようなB to B企業こそ『リクルーター』活用の効果は大きい」と語るのはプラント・鉄塔メーカーのデンロコーポレーション採用担当役員、鈴木裕子さん。同社では昨年から社員約650人のうち、60人近くをリクルーターに任命している。

「私たちはライフラインを支える送電用・通信用鉄塔のトップシェアメーカーですが、学生にはなかなか仕事をイメージしてもらえない。でも実際に働いている社員が、スマホの写真を見せながら『最初はお客さんに相手にされなかったが、こんな努力をして、最終的には大きなプロジェクトを成功させた』なんてストーリーを話すと、学生の目が途端に輝いてきます」

リクルーターの活用は、昨年、伊藤忠商事など大手総合商社が大規模に展開。優秀な学生の採用に成功したことで注目を集め、今年は他業界や中小企業にも広がっているという。さらに「OB・OG訪問」を積極的に受け入れる企業も増えている。

「従来はインターンシップに注目が集まっていたが、参加する学生が7、8割にまで増えて見極めが難しくなった。一方、自分でツテを探してOB・OGにコンタクトしてくる学生は2割程度。彼らは行動力があり、優秀という見方が広がった」(谷出さん)

「VISITS OB」や「ビズリーチ・キャンパス」など、学生が企業の中で活躍する先輩を探してコンタクトできるサービスもここ1、2年で増えた。

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