「おもてなし」という言葉の本当に大事な意味 相手の心に寄り添うことが最も大切だ

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さらに、この「応病与薬」は「対機説法」(たいきせっぽう)とも言います。これも意味は同じで、仏が教えを説く場合、相手の能力や性質などに応じてそれにふさわしい説法することを意味します。

「おもてなし」に大事なもの

これらの共通点は何かというと、「相手に寄り添う」ということです。これは、できるかぎり相手の立場に立って物事を考え、必要とされることを提供することです。つまり、相手の「こころ」に寄り添うことなのです。

私は、この「こころに寄り添うこと」こそ「おもてなし」において最も大切なことだと思うのです。何をもてなすのかと問われたとき、それは相手の「こころ」です。ただ一方的に、こちら側の判断だけで「もてなす」のであれば、それは押し付けになってしまいます。だからこそ、相手の「こころ」に寄り添い、必要としていることを察知して「もてなす」ということを忘れてはいけない気がします。相手の「こころ」を大切にすることが、「もてなし」に「お」という丁寧がついた「おもてなし」なのではないでしょうか。

これらを踏まえたうえで、「おもてなし」を英語にすると「To take good care of other’s heart」(相手の「こころ」を大切にすること)や「To know other’s feeling/mind/intention」(相手の気持ちを知ること)というような表現になるのではないかと思います。

私自身、これまで「おもてなし」だと思っていた行動は、実は一方的な「もてなし」だったかもしれないと思うようになりました。「もてなし」ではなく、「お」「もてなし」ができるよう、心がけていきたいと思います。きっと、この姿勢が自己満足を超えた相手の笑顔を通して、自分も笑顔になるという深い喜びに繋がると信じています。

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大來 尚順 浄土真宗本願寺派僧侶

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おおぎ しょうじゅん / Shoujun Oogi

1982年、山口県生まれ。浄土真宗本願寺派僧侶でありながら、通訳や翻訳も手掛ける。龍谷大学卒業後に単身渡米。カリフォルニア州バークレーのGraduate Theological Union/Institute of Buddhist Studies(米国仏教大学院)に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。帰国後は東京と山口県の自坊(超勝寺)を行き来しながら、僧侶として以外にも通訳・翻訳、執筆・講演などの活動を通じて、国内外への仏教伝道活動を実施。翻訳著書も多数出版する傍ら、初級英語で仏教用語をやさしく解説した「英語でブッダ」(扶桑社)も非常に好評のほか、「お坊さんバラエティ ぶっちゃけ寺」(テレビ朝日系列)にも出演。
 

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