SL列車の観光客が「一番感動する」のは何か 「トーマス」人気の大井川鐵道社長に直撃!

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――社員の方々の士気も変わってきていますか?マネジメントなどはどのようにされたのでしょうか。

鉄橋を渡る「きかんしゃジェームス号」(写真:小佐野景寿)©2016 Gullane (Thomas) Limited

お客様へのおもてなしの心は、やはり大きく変わったと思います。就任当初に約300人の従業員全員の面談をしまして、今は各職場に社長への投書箱として「前田ボックス」という箱が置いてあります。投書すると、だれの目にも止まることなく私に来ます。改善提案が採用されれば、報奨金を発案者にちゃんとお返しします。ひと言で言うと、風通しのよさだと思うんです。言いたいことが言える。言いたいことがちゃんと伝わるというのは、従業員にとって非常に大きなモチベーションになるんですね。

「JRさんがやらないことをやれ」と私はずっと従業員に言い続けてきています。JRさんの否定ではありません。JRの運転士さんがお客様に自分の帽子をかぶせて写真を撮ってあげるといったことは、なかなか難しいでしょう。われわれはそこをやろうと動いています。たとえばSLの運転席にお客様を座らせて写真を撮ってあげるとか、お客様が今何をしてほしいかという気持ちを各自が察して行動するようになってきています。そこも、今後さらに醸成したいなと思っています。

SLやトーマスはもちろん大事です。でも、もっとも大事なのは、やっぱりソフト、人だと思います。従業員がよりお客様の気持ちを察して、満足度につながる行動をしてくれたら、私はそれが理想の形だと思っています。

インタビューを終えて「レールで結ばれる地元の絆」
第三セクターという形をとらず、私鉄としてしっかりと「できること・今すべきこと」を一つ一つクリアする。異業種で培ったノウハウと、それ以上に社長の実直で真摯な姿勢あってこそ、古くから沿線に住まう人々の気持ちを捉えた独自の協力体制が整うのだと感じました。
以前、SLフェスタで鉄道写真家の中井精也先生が「想像してみてください、もしこの地域に大井川鐵道が走っていなかったら。」と印象的な言葉を残されました。きっとその貴重さを、大鐡スタッフのみならず沿線の皆さんが自覚しているからこそ生まれる絆。この絆をもとに、新たなステージに進まれる姿をこれからも追いかけていきたいと思います。
久野 知美 女子鉄アナウンサー

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くの ともみ / Tomomi Kuno

フリーアナウンサー、女子鉄。ホリプロ所属。旅行が趣味で、大学時代よりアメリカ・イタリア・インドネシア・コスタリカなどさまざまな国を訪問。国内は「青春18きっぷ」でおトクに巡る派。鉄道関連のTVやラジオ・イベントでMCを多数務め、テレビ朝日「お願い!ランキング」ほかゲスト出演も。

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