トランプ大統領は、実は演説に超必死だった

これから後も、市場をだませるとは限らない

ところがこの日の議会演説で、トランプ氏はまるで生まれ変わったかのように「大統領らしく」振る舞ってみせた。演説が始まる直前、メラニア夫人の隣席に黒人女性2人が居るのをテレビカメラが映した瞬間から、「何かあるな」という予兆はあった。演説中に何度もカメラが当たる場所だけに、いかにも演出上の「仕込み」がありそうに見えたのである。

歴代大統領の「お作法」を守った

案の定、トランプ大統領はこんな風に切り出した。

「今宵、黒人歴史月間を祝う月の最終日にあたり、これまでの公民権運動の歩みと残された課題について思わずにはいられません」

おおっ、あのトランプが「らしくない」ことを言ってるぞ。いや、言ってることは「まとも」で「大人」だし、「つかみ」としてはバッチリなんだが、過去の演説との落差にめまいがしそうである。

「アメリカの各世代は、真実、自由、そして正義のたいまつを受け継いできました。それらは途切れることなく今日に至っています。たいまつは今、われわれの手中にあります」

これにも驚いた。「たいまつ」とはあのJFKが就任演説で使った言葉である(「敵味方の区別なく、ここからすべての人々に伝えよう。アメリカのたいまつは今、新しい世代に渡されたと」)。民主党のケネディ大統領の言葉を、冒頭から使ってきた。しかもアンタ、「真実」に「自由」に「正義」なんて言葉、今まで使ったことなかったじゃん!

この調子で延々1時間以上、トランプ氏は堂々と「大統領の議会演説」を演じきった。途中で「かむ」ことはなく、もちろんひるむこともなかった。何人ものゲストを紹介し、その中には不法移民に殺害された警官の未亡人(メラニア夫人の隣にいたジェシカ・デイビスさんとスーザン・オリバーさん)も含まれていた。

その都度、スタンディングオベーションが生じたことは言うまでもない。いやもう、歴代大統領が磨き上げてきた一般教書演説の「お作法」どおり。最後は、”Believe, once more, in America.”(もう1度アメリカを信じよう)という言葉でカッコよく締めた。

演説の中身自体は今までどおりなのである。「メキシコとの国境に壁を作る」し、「ISISは地上から根絶させる」と言っていた。「job-killing TPP」から撤退してやったぜ、なーんてくだりもあった。”Buy American, Hire American.”(アメリカ製品を買い、アメリカ人を雇おう)とか、「私の仕事は世界を代表することではなく、アメリカ合衆国を代表することだ」など、お気に入りのフレーズもいつもどおりに使われていた。

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