激安ノートパソコンが快進撃!! 日本勢の「聖域」に殴り込み

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 「やたら安いね」。家電量販チェーンの店頭で買い物客が足を止めた。台湾・アスーステック(華碩電脳)のノートパソコン「EeePC(イーピーシー)」だ。

B5判よりひと回り小さく、重量は1キログラムを切る。従来このクラスの製品は10万円を下らなかったが、EeePCは実勢価格5万円弱と破格の安値で登場。1月の発売後には3日間で1万台が“蒸発”し、現在も月1万台ペースで売れている。海外では2007年10月に標準価格399ドルで発売され、欧米とアジアで人気沸騰。この5月までに、日本の年間パソコン販売総数に匹敵する150万台を売り切った。台湾発のこの製品が今、「ULCPC(超低価格パソコン)」という新市場を開拓し、業界を揺さぶっている。

シェア下位メーカーがパソコン市場を席巻

パソコン世界首位の米ヒューレット・パッカード(HP)は今春、同社初のULCPC「mini」シリーズを世界で発売。日本でも6月末に6万円弱で売り出し、2日間で数千台を完売した。一足遅れた米デルも「小型モデルにビジネスチャンスがある」(マイケル・デルCEO)として、今夏にも世界で発売する見通し。業界のツートップが、シェア下位の台湾メーカーの後を追う。

波は米マイクロソフトにも及ぶ。同社は4月、ULCPCに限り、スムーズな動作が実現可能な基本ソフト(OS)ウィンドウズXPの使用期限を10年6月まで延長すると発表。07年初から新しいOSのウィンドウズ・ビスタへの拡販に注力し、XPは販売を打ち切るという方針を一転させた。米インテルも現在、ULCPC向けCPU(中央演算処理装置)の生産を急拡大中で、業界には供給不足の観測も出ている。

アスースは1989年に4人の台湾人エンジニアが設立。日本や欧米メーカーから受託したパソコン部品のOEM生産で成長した。自社ブランドのパソコンも生産するが、EeePCのヒットまでは世界シェアも知名度も低かった。そのアスースがなぜ先駆的製品を生み出せたのか。理由は二つある。

一つは機能面の大胆な“割り切り”だ。映像付きのチャットが楽しめるようウェブカメラを標準搭載するなどインターネット関連機能を充実。一方でコスト増大要因になるバッテリーの駆動時間は約2時間。従来売れ筋のモバイルノート機種の6~8時間には遠く及ばない。この“割り切り”が、インターネット使用がメインのユーザー需要をつかんだ。つまりマーケティング面での成功だ。

もう一つは生産面にある。アスースは、パソコンの部材コストの約2割を占める中核部品であるマザーボードを他社向けにOEM生産しており、そのシェアは約3割で世界首位。この生産規模を生かし、EeePCでは極めて低価格なマザーボードを内部調達できている。

 
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