「瑞風」に旧「トワイライト」の面影はあるのか シングルルームは「あの個室」にそっくり?

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そして、最上クラスの「ザ・スイート」。1両全体がひとつの個室寝台になっており、広さは実に約35平方メートル。プライベートバルコニー、リビング・ダイニング、寝室、バスルームを備え、その広さは東京の高級ホテルの上級客室に匹敵する。

「ザ・スイート」のバスルーム。お風呂につかりながら車窓風景を楽しめる。ただし、窓はマジックミラーにはなっていないので日中は注意しよう(JR西日本提供)

中でも特筆すべきは、日本で初めて設定された、バスタブ付きバスルームだ。瑞風が運行される路線のひとつである山陽本線は、戦前の1935(昭和10)年、日本で初めてシャワールームを備えた豪華特急列車「富士」が運行された路線。その同じ山陽本線で、とうとう風呂で足を伸ばしながら車窓風景を楽しめる時代が来た。JR西日本の説明員によれば、バスタブは定員2名がそれぞれお湯を張っても十分な量の湯を搭載しているという。

寝台列車の伝統を継承するJR西日本

個室以外にも、旧トワイライトのダイニングの名称を受け継いだ食堂車「ダイナープレヤデス」、バーカウンターで24時間ドリンクを楽しみながら自由にくつろげるラウンジカー「サロン・ドゥ・ルゥエスト」、空まで見上げることができる開放的な展望車と、後方展望を楽しめる展望デッキなど、多彩な設備が揃っている。乗務員も、新たに多くの人材が採用される一方、乗客をもてなすホスト役の責任者である列車長には旧トワイライトでクルーを務めていた人物が就任した。

乗り心地もばつぐんだ。ゆらゆらとした横揺れを抑えるヨーダンパや、​上下左右の揺れを打ち消す​アクティブ動揺防止装置などが搭載され、乗り心地は旧トワイライトとは比べものにならないほど向上した。「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」は、旧トワイライトの遺伝子を取り入れつつ、2017年最新の技術とサービスを取り入れた列車である。

完成した「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」を見ていると、JR西日本は蒸気機関車と同様に、寝台列車の文化を継承しようとしているように感じる。昨年11月の記者会見で、来島達夫社長が「より多くの方に気軽に鉄道の旅を楽しんでもらえるように、瑞風とは別に新たな長距離列車の検討を始めた」と発言したのも、そうした意識の表れだろう。

日本の寝台列車の伝統を受け継ぐ、最高の列車がいよいよ走り出す。次は、ブルートレインの遺伝子を備えた、「新たな長距離列車」にも大いに期待したい。

栗原 景 ジャーナリスト

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くりはら・かげり / Kageri Kurihara

1971年東京生まれ。出版社勤務を経て2001年独立。旅と鉄道、韓国をテーマに取材・執筆。著書に『新幹線の車窓から~東海道新幹線編』(メディアファクトリー)、『国鉄時代の貨物列車を知ろう』(実業之日本社)等。

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