活気づくiPS細胞研究

活気づくiPS細胞研究

東京大学医科学研究所 教授 渡辺すみ子

 昨年iPS細胞樹立のニュースをレポートしてから7ヶ月余りがたったが、iPS細胞にかかわるニュースはいまだに連日のように新聞やテレビをにぎわせている。この間に起こったiPS細胞にかかわる動きや新しい発見について今回は報告しよう。

●すべての研究者に再現可能なiPS細胞

 iPS細胞樹立以来、iPS細胞にかかわる研究の発展でおそらく一番重要な点は、iPS細胞の作成、そこからの分化などの実験を京都大学・山中伸弥教授の開発したやりかたにきちんと従えば誰でも再現できる、という点である。この点はiPS技術の汎用性を示すが、今後iPS細胞の研究、および実用化を進めるにあたって、この汎用性はきわめて重要である。
 かつての韓国のES細胞の核移植の報告は不幸にして捏造であったことがあきらかになったが、核移植はきわめて高い技術力や経験を要し、あの報告が本当であったとしても、とても同様の研究を他の研究者が追随できる状況ではなかった。ヒトのiPS細胞の樹立を製薬企業の研究者が先に成功していた可能性があることが報じられたが、作成にあたって山中教授のマウスでのiPS細胞樹立の論文を参考にしたという。この事実からも示唆されることは、山中教授が提供した情報をもとに他の研究者が同様のことを再現し、さらに応用することが可能であるということだ。iPS技術の汎用性により、多くの技術や知識の共有が可能となり、この領域全体の発展が進む。また、研究データや臨床応用の計画の公平で正確な評価が可能になることで、安全性が高まることも期待される。

第二世代iPS細胞の写真。フィーダーとよばれる栄養源などになる細胞を敷き詰めた上で円形のコロニーをつくる。この一つの丸い細胞はたくさんの細胞の集団で、丸く、個々の細胞の境界がみえにくいところなどES細胞と類似している。 ES細胞のコロニー。このコロニーは少し分化をはじめたコロニーで、細胞と細胞の境界線がコロニーの周辺部では観察される。

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