過熱する排出権争奪戦−−温暖化ガス削減ビジネスの実態

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メインプレイヤーは総合商社 財閥系の堅実、丸紅の積極

日本のCDMビジネスの先頭を走るのは間違いなく総合商社だ。電力会社などの需要家を除けば、世銀と一部の外資系、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅の存在感が際立つ。

案件発掘、ファイナンス、工事の管理などCDMに伴う業務は、さまざまなプロジェクトを手掛けてきた総合商社の十八番。業者間売買が当たり前である海外の業者と日本勢が違うのは、案件の発掘から排出権の販売まで、一貫して自分たちで手掛ける姿勢だ。「自分たちでプロジェクトに取り組むのが基本」と住友商事の村田雄史・温室効果ガス削減プロジェクトタスクフォースリーダー。三菱商事の慶田氏も「事業性調査から排出権の販売までフルカバーでやるのが原則」と話す。

こうした自前主義を取っている最大の要因は、電力、鉄鋼といった大口需要家が最初から売り先として決まっていることだ。とはいえ、自前主義だけでは排出権の確保が追いつかないのも事実。自前主義の色が濃い三菱商事、三井物産、住友商事に対して若干スタンスが違うのが丸紅だ。

丸紅はCDMの自社開発も行っているが、他社が開発した排出権購入にも積極姿勢を見せる。06年度、07年度と日本政府に販売した排出権も海外企業が手掛けたプロジェクトから入手した。

同社は販売面でも独自路線を歩む。需要家からは数量保証の要望が出るが、日本勢のメインとなる先渡し契約では実際に購入できる排出権が確定しない。そこで、丸紅はこうした企業に対して数量保証契約も扱い、そのために少量だが排出権のロング(買い持ち)を行っている。

数量保証の契約やロングはリスクが高くなるので他商社は消極的だ。丸紅は日本企業で唯一、欧州のECXに加盟し、今年3月にはECXでの排出権(CER)取引も開始している。ロングやマーケットでの取引によって数量保証の受け渡しリスクをヘッジするのが狙いだ。

同社では13年以降排出権の契約も検討している。ポスト京都の枠組みが決まる前ならば、13年以降の排出権は格安に取得できるためだ。

総合商社以外で存在感を示すのが三菱UFJ証券だ。01年2月、2人の専任を置き排出権ビジネスに参入、CDMのコンサルティングでは業界屈指の存在になっている。もともとは、本業を通じた社会貢献、環境貢献が狙いだった。CDMを活用すれば、従来ならできなかった環境プロジェクトが事業として成り立つ。「計画書の作成業務は外債の目論見書作成に似ているし、CDMの事業提案はM&Aのアドバイスに通じる」(三菱UFJ証券・クリーン・エネルギー・ファイナンス委員会の豊福昌之事務局長)。

途上国には資金の余裕がないため、コンサルティング料は将来発行される排出権の数%という成功報酬。CDMの排出量削減の方法論の作成も手掛ける。この分野では世界銀行に次いで世界2位の実績だ。

コンサル業務以外では、金融機関は小口や個人の排出権ニーズを狙う。たとえば、大和証券グループは排出権価格にクーポンが連動する債権を一般向けに売り出した。信託銀行は信託受益証券を利用してカーボン・オフセットの商品開発などに余念がない。ただ、この程度では市場規模も限られており、ビジネスとしてはあまり魅力がないのも事実だ。

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