キッコーマン、「量より価値」追う 「しぼりたて生しょうゆ」の立役者、堀切・新社長に聞く

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――加工用しょうゆの得意先と競合する商品を出した。社内での反対はなかったのですか。

たとえば焼肉のたれは、エバラ食品工業、モランボン、日本ハムなどの企業が手がけており、中にはうちのしょうゆを原料として使ってくれているお得意先もありました。当然、営業部門からすれば、諸手を挙げて賛成というわけではなかったでしょう。実際、一時的に取引がなくなったこともありました。それでもたれ・つゆ市場の開拓を推し進めたのは、当時の茂木友三郎社長(現名誉会長)が「守りから攻めへ、挑戦的な企業体質に」というスローガンを打ち出したからです。

当時はしょうゆを作ることに関しては世界一でも、それ以外の商品では世界一どころか日本一でもなく、まだよちよち歩きでした。けれど、つゆやたれのような簡単に使える専用調味料は、これから必ずニーズが出てくる。ということで、しょうゆをベースにした調味料に積極的に出て行ったわけです。

和風調味料「うちのごはん」は、いわばその戦略の延長線上にある商品です。つゆ・たれから味作りのノウハウが蓄積され、いろんな商品に派生してきました。

国内しょうゆ市場で量的な成長は難しい

――その一方で、主力商品であるしょうゆは消費量の縮小が続いています。

しょうゆにおいて量的な成長というのは、国内マーケットではなかなか難しい。人口減、少子高齢化、家庭内調理の減少など、大きな環境の変化があるからです。海外では和食ブームなどでしょうゆが評価されているのに、肝心の国内ではあまりにコモディティ化していて、しょうゆに振り向いてもらえない。

「特選丸大豆しょうゆ」などの定番商品については、レシピ開発などを通じてしょうゆを使うシーンを紹介することで、需要の喚起を図っていきます。ただ、どちらかといえば販売量を追いかけるのではなく、価値を高める方を目指していきたい。12年にブレイクした「しぼりたて生しょうゆ」は、しょうゆのコモディティ化という状況を変える方策の一つです。

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