あのジャストシステムが大変貌を遂げていた 今や収益柱は「一太郎」「ATOK」ではない

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「一太郎」はパソコン販売が低迷の影響を受けている(記者撮影)

「漢字苦手だなぁ」

「そこの少年。そんなことより、勉強で大事なのは書いて覚えること」

俳優の藤木直人さんと小学生のやり取りが印象的なテレビCM。専用タブレット端末を使った小学生対象のクラウド型オンライン通信教育「スマイルゼミ」の広告だ。このスマイルゼミを2012年11月から運営しているのが、文書ソフト「一太郎」や日本語表記ソフト「ATOK」などで知られるソフトウエア会社、ジャストシステムだ。

20年近いノウハウの蓄積が強み

「スマイルゼミ」で使用されているタブレット

同社は、全国の小学校の8割、1万7000校への導入実績がある学習・授業支援ソフト「ジャストスマイル」も販売している。最初にこのソフトを発売したのは1999年。パソコン(PC)を利用して授業を行える教師が少なく、環境も整っていなかった当時から学校教育の現場に教育ソフトを提供し続けてきた。「スマイルゼミ」には、このような教育機関向け学習ソフトのノウハウが反映されている。

2013年11月からは「スマイルゼミ 中学生コース」を開始。さらに、進学校を目指すコースや英語プレミアムコースなど新コースも順次投入している。通信教育の正確な会員数や業績については開示していないものの、2013年11月時点では「小学校向け、中学校向けを合わせて10万人という数字が見えてきた」と事業担当者が発言している。足元でも、「コースを拡充している効果もあり、会員数は着実に増えている」(関灘恭太郎社長)という。

一方、同社の創業時からの柱である、「一太郎」、「ATOK」などPC向けソフトウエア市場を取り巻く環境は厳しい。電子情報技術産業協会(JEITA)によると、PCの国内出荷台数(デスクトップ、ノート型の合計)は、2014年度、2015年度とも前年比2割以上減少。2016年度は下げ止まりの傾向にあるとはいえ、前年度比横ばいで推移している。「一太郎」や「ATOK」も、このような厳しい市場環境の影響を受けている。

しかし、ジャストシステムが「新規事業」と位置づける前述の小中学生向け通信教育事業や企業向けデータ分析ソフトなどが牽引し、同社の業績は好調だ。2010年度以降、5期連続で増収増益。2010年度に13.8%だった営業利益率は、2015年度に27.5%まで上昇した。

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