ハリスツイード会長「ロゴ悪用品は廃棄せよ」 商標を誤用する販売業者に法的措置も辞さず

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――今回の緊急来日の目的は何か?

日本市場で複数の業者による「オーブマーク」誤用問題を確認したことから、現状の把握と問題解決のために来日しました。この件に関してはスコットランド国際開発庁からも指摘を受けています。

日本はハリスツイードの輸出に関して2015年は60%、2016年は40%を占める重要な市場です。私自身が実際に日本に来て、なぜこの問題が起こったのか。この実態を解明し、スコットランドへ帰り、ハリスツイードの製造業者であるミルに今回の問題を起こした業者と原因を明らかにする必要があると考えています。

「悪用した製品を見ると、本当に悲しくなる」

――ハリスツイード側は日本市場をどう考えているのか。

ニット帽の一部にハリスツイードの生地を張り付けただけで、「ハリスツイード」を名乗る商品。マコーレー会長は「許可を出していない」と語気を強めた(撮影:梅谷秀司)

私たちハリスツイード側が日本市場を重要と考えるのは市場規模ばかりではありません。日本はハリスツイードの作られている背景やカラー、パターン、クラフツマンシップも含めて、ハリスツイードの本質を理解し、愛している市場だと私たちは考えています。

私たちの島は人口2万6000人、400の業務がハリスツイードに関することです。私の両親もハリスツイードの産業で働いたし、私の祖父もそうでした。私もこの産業で働いている。私の息子や次の世代にも続けていかなくてはならない。私たちにはこの産業を続けていくことが本当に重要であり、今回日本で起きた問題を深刻にとらえています。

――ハリスツイード協会がこの問題に気がついたのはいつか?

つい最近です。私たちは、長年、販売業者や商社、さらにスコットランド国際開発庁と良い信頼関係を築いてきました。不適切な方法でハリスツイードを使用した製品があると彼らに警告され、そこで気がついたのです。

私が推察するに、問題を起こした業者はハリスツイードの価値を理解していないと思われます。どのように作られ、ハリスツイードの背後にはどんなストーリーがあるのかを。このストーリーこそ、人々がこのファブリックに敬意を払い、愛する理由です。

人々はそのクラフトの価値と技術に対価を払っています。もちろん、ファッションの傾向は変化し、今は誰もがハリスツイードを着ることはありません。アクセサリーの市場が成長し、ハリスツイードの売り上げを拡大させたことはいいことです。

しかし、そのために製品を作っている人々、男性、女性を含めた島の熟練の職人たちが、手から作り出すファブリックの価値を損なうようなことがあってはならないのです。

こうしたブランドロゴを悪用した製品を見ると、本当に悲しくなります。販売業者に対して、「すぐに廃棄するべき」と言いたいです。300年続くハリスツイードの伝統を弱体化させるものに他ならないと。

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