英国の3月EU離脱通告で金融機関が動き出す フランクフルトやパリには追い風となるのか

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2月3日にマルタの首都バレッタで行われた今年初のEU首脳会議で、メルケル独首相(左)と話すメイ英首相(写真:AP/アフロ)

今回のコラムは出張で滞在中のEU(欧州連合)の首都・ブリュッセルで執筆している。ブリュッセルは、今回の出張で、ロンドン、パリに続く、3つめの訪問都市。どの都市でも政治の年が本格的に幕を開ける3月を目前にした緊張の高まりを強く感じた。

今年は欧州統合の創設メンバーの6カ国(フランス、イタリア、ドイツ、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)のうち、少なくとも3カ国(オランダ、フランス、ドイツ)が国政選挙を予定している。

3月15日のオランダの議会選挙でいよいよ口火が切られる。世論調査では、本格的な選挙戦が始まってからも、反イスラムのヘルト・ウィルダース氏率いる自由党が第1党の地位を保つ。英国の国民投票における離脱の選択、米国の大統領選挙でのトランプ氏の選出に続く、ポピュリスト勝利の波がオランダで勢いを増すことになるのか。その波が、候補者選びのプロセスから想定外が続くフランスの大統領選挙に及ぶことになれば、「欧州の統合は終わる」。ブリュッセルにはそんな重苦しい雰囲気が漂う。

EUの姿勢も厳しく「無秩序な離脱」もありうる

英国政府によるEU(欧州連合)からの離脱(BREXIT)の意思の通告もいよいよ間近に迫ってきた。国民投票による離脱選択後も、英国経済は予想外の底堅さを保ってきた。しかし通告によって、EU条約第50条の離脱手続きが発動され、原則2年後に英国がEU加盟国としての地位を失うことが視野に入れば、経済への悪影響は明確になってくるだろう。

その最大の理由は、英国政府がEUからの離脱だけでなく、財・サービス・資本・人の移動が自由な単一市場からも、域内関税ゼロ・対外共通関税・共通通商政策からなる関税同盟からも去る方針を決めたことにある。

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英国政府は、経済的な合理性よりも、離脱派の公約を実現する政治判断を優先させたが、経済への悪影響はできるだけ抑えたいという意思はある。EUとの間では、離脱までの2年間で離脱の条件だけでなくEUと新たなFTA(包括的自由貿易協定)でも大筋で合意し、離脱と同時に新協定への段階的な「移行期間」に入るという戦略だ。

しかし、英国政府の戦略通り、「秩序立った離脱」となるのかは見極めきれない。EUにとっても経済合理性からは「秩序立った離脱」のほうが望ましい。しかし、今のブリュッセルには、加盟国に広がるポピュリズムと反EUの流れを止めなければEUが崩壊しかねない、という危機意識が強い。少なくとも政治の年・2017年の協議は、EUに残る27カ国の結束を保つ政治的な判断を経済よりも優先させて、英国との交渉に厳しい立場で臨みそうだ。

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