「グローバル化が失業をもたらした」は大嘘だ

ポピュリストの主張には耳を貸すべからず

世界中の人々の大半にとって、グローバル化以前の人生は貧しく過酷で、短かった。それなのに、現在の反グローバル主義者は古い時代を懐かしみ、米国やロシアやイスラム社会を「再び偉大」にしたいと考えている。

2008年の金融危機で世界経済は好ましくない状態に陥りはしたが、雇用と経済環境は現在、ほぼ全面的に回復している。インフレ調整後の実質GDP(国内総生産)はユーロ圏で15四半期連続の増加を示し、すべてのEU(欧州連合)加盟国は今後数年間、経済成長すると予想されている。

一方、米国経済はすでに好調に推移している。失業率は5%を下回り、実質所得は増加しているのだ。

もちろん、移民などが伝統的な平和と安定をむしばんでいると感じる人々が増え、不安感が高まっていることは事実だ。こうした考えは世界で最も弱い立場にある人々にとって深刻な脅威となっている。2030年までにあらゆる形態の貧困に終止符を打つことを目標とする国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現は、貿易、技術革新、国際協力を通じた経済成長が続くかどうかにかかっている。

保護主義の犠牲になるのは弱者だ

貿易障壁の構築などによって自由貿易世界の秩序が損われれば、アフリカなどの開発途上地域の極貧層に深刻な被害が及ぶ。かと言って、米ウェストバージニアの炭鉱夫が救われることはあり得ない。グローバル化に反発するノスタルジックな保護主義の負の影響は、弱者こそが被ることになるだろう。

今年ダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会では、中国の習近平国家主席がグローバル化の恩恵を賞賛したにも関わらず、西側のビジネスリーダーの多くが、これに対し疑念を示した。共産主義者がグローバル化への信仰を保つ一方で、資本家がそれを見失っているのは、過去の経緯からすれば非常に奇妙なことだ。

われわれは、わずか数十年前には夢にすぎなかった繁栄を多くの人にもたらしたプロセスに、全面的な自信を持たなければならない。

週刊東洋経済3月4日号

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