スズキ「新型ワゴンR」の高すぎる販売目標 月間1.6万台を本当に達成できるのか

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メーカーの生産工場稼働率の維持、販売ディーラーの実績確保、メーカー間での激しい販売合戦などなど、理由を挙げればキリがないが、在庫として抱えている新車を売り先が決まっていないのに、ディーラー名義などで自ら届け出を行うことでナンバープレートを取得。そして使わないままに中古車市場で流通させているものは「未使用中古車」と呼ばれている。中古車市場には軽自動車だけでなく、登録車も含めて「未使用中古車」がいま大量に流通している。

2016年の軽自動車・車名別新車販売ランキングでトップ5に入ったモデルは、いずれも未使用中古車専売店もしくは、未使用中古車をメインに扱う中古車販売店の店先に数多く展示されている。某業界事情通からは、「全体の販売台数の45%ほどが自社届け出になっているブランドもあると聞いている」などという情報も入っている。

軽自動車の販売台数争いの勝敗は、あくまでエンドユーザーへの正式な販売をベースにしているものの、ライバルメーカーの動きを探り、ライバルを蹴落とすために必要な数をしっかり自社届け出で積み増しができたかにかかっているなどと口の悪い関係者は語っているが、月によっては数百台などという僅差で販売台数争いが展開されているのを統計で見ると、メーカー間でなんらかの“探り合い”が行われているのは確かなようだ。

販売活動に臨むための「表明」のひとつか?

スズキは2016年の年間販売台数において、目標どおり「登録車10万台販売」をクリアした。登録車販売に力を入れる関係もあり、軽自動車では現状シェア維持程度を目標に、ここ最近は軽自動車販売のデッドヒートには積極的な参加をしてこなかったと見る向きが多かった。

2016年の年間軽自動車販売のメーカー別シェアでスズキは30.2%を維持。トップのダイハツとは3.4%差、3位のホンダとの差は11.5%となっており、少なくとも業界2位はしばらく安泰とはいえるが、2017年1月単月だけ見れば、ホンダとの差は8.5%、2016年12月は7.8%とホンダの追い上げも激しくなっている。

需要の変化という逆風も踏まえて、スズキが新型ワゴンRの月間販売目標として1万6000台の達成を死守することを主眼に置くなら、再び「行儀の悪い売り方」を容認してもおかしくない流れにも見える。それとも、販売目標は公表値と社内向け値で異なることも一般的には多く、軽自動車販売トップを目指して販売活動に臨むための「表明」のひとつなのか。数カ月から半年程度でその答えが見えてくるだろう。

小林 敦志 フリー編集記者

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こばやし あつし / Atsushi Kobayashi

某メーカー系ディーラーのセールスマンを経て、新車購入情報誌の編集部に入る。その後同誌の編集長を経て、現在はフリー編集者。

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