内定の近道は「合同説明会」の回り方にある いよいよ本日解禁!大事なのは生の企業研究

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国民生活センターの調査によると、就活塾に関する被害相談は毎年約120件あり、平均被害金額は約28万円と、就活生にとっては高額だ。被害に遭った場合、就活中の忙しい学生が28万円の借金を背負うこともありうる、ということである。

合説会場の近くで就活塾の若いセールスマンが「学生さんですか?」などと親しげにアンケートを求めてくるが、相手にしてはならない。もし、氏名や電話番号、メールアドレスなどを書いてしまうと、その後、すぐに連絡が来る。よくあるパターンは「無料の就職セミナーがあるから出席しませんか」というもの。無料ならばいいと思って出掛けると、大変なことが待っている。30分から1時間程度は講演があるものの、その後で個室に案内されて、1対1で、または複数のスタッフに囲まれて、長時間にわたり入塾勧誘を受けることになる。

勧誘時間が6時間を超えることもある。かなり威圧的な雰囲気で勧誘されるために、「早くこの場を逃げ出したい」という一心で、契約を結んでしまう学生が少なくない。

会場周辺のあらゆる勧誘は無視

中には良心的でしっかりと学生を指導している就活塾もあるが、どの塾が悪徳で、どの塾が良心的なのか判断するのは、容易ではない。就活塾のアンケートは無視するのがいちばんだ。

新興宗教団体がパンフレットや書籍を配布していることも時にはある。いきなり布教活動をしてくるわけではないが、就活で不安な精神状態にある学生を取り込もうとしているのは間違いない。新興宗教とはいっても、ある程度有名であったり、代表者の名前が知られていたりするなら、団体の実体がわかる。しかし、無名団体であると実体がわからず、後でとんでもないトラブルに巻き込まれてしまうかもしれない。

写真館の宣伝も行われている。ESに貼りつける写真を少しでも見映えのよいものにしたいと学生が思うのは当然だろう。しかし、就職試験は俳優のオーディションではない。写真に神経質になっても意味はない。自分の大学の生協で撮った写真で十分だ。撮影前にヘアメークや化粧などのサービスを実施している生協もある。生協ならば所在がはっきりしているので、トラブルがあってもすぐに解決できる。わざわざよく知らない写真館で撮影を頼む必要はない。

合説には焦る就活生を狙った、さまざまな”誘惑”が潜んでいる。余計な回り道をせず、健全な就活の王道を歩んでほしいものである。

田宮 寛之 経済ジャーナリスト、東洋経済新報社記者・編集委員

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たみや ひろゆき / Hiroyuki Tamiya

明治大学講師(学部間共通総合講座)、拓殖大学客員教授(商学部・政経学部)。東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日経ラジオ社、米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクに。2007年、株式雑誌『オール投資』編集長就任。2009年就職・採用・人事情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げ編集長となる。取材してきた業界は自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など。2014年「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職

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