ジョーンズ ラング ラサール

海外の不動産投資家と日本の地方再生 JLL (ジョーンズ ラング ラサール)

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海外の投資家が今、日本の不動産に熱い視線を送っている。かつてはその対象は東京都心部の物件が中心だったが、最近では大阪、名古屋、札幌、福岡など、地方都市の物件もニーズが高まっているという。その背景にはどのような理由があるのか。また、海外の投資家に選ばれる物件の条件とはどのようなものなのか。ジャーナリストの福島敦子氏が、世界最大級の総合不動産サービス会社JLL日本法人の専門家に尋ねた。

海外の投資家が日本の不動産に関心を持つ理由

福島 ここ数年、海外の投資家や外資系ファンドによる、日本の不動産、特に東京都心のオフィスビルや商業施設、ホテルなどへの投資が活発化しています。海外の投資マネーが日本の不動産市場に入ってきている理由はどこにあるのでしょうか。

AKIHIKO MIZUNO
JLL 取締役執行役員
キャピタルマーケット事業部長
水野 明彦

水野 要因の一つは「セーフヘイブン」としてのステータスです。英国の欧州連合(EU)離脱や米国の新大統領誕生など、世界情勢の不安定化が高まっています。それに対して日本は、地政学的なリスクも少なく、安全な投資先と認識されているようです。

また、日本は金利水準が低いので、物件の利回りが低くてもある程度のリターンが期待できます。さらに、長期のデフレからの脱却に対する期待もあります。日本の不動産については、バブルの時のように大儲けはできなくても、堅実なリターンが見込めるアセットとして注目されています。

福島 その一方で、海外の投資家から投資先として日本を見ると、課題も少なくないと聞きます。具体的にはどのような点に問題があるのでしょうか。

水野 不動産投資の世界では市場の透明度と呼ばれていますが、日本では、賃料のデータや取引事例などの情報が、他の先進国と比較すると公開されていないのが実情です。当社では「グローバル不動産透明度調査」という調査を2年に一度行っています。2016年度の結果では日本は19位で徐々に順位を上げていますが、まだ透明度が高いとは言えません。

海外の投資家にとっては賃料データや契約書が日本語であることも大きなハードルです。投資判断につながる情報をパブリックに英語で入手できないというのでは2大グローバルシティとされるニューヨークやロンドンになかなか追いつけないということになります。そのためにも、当社では、英語のほか、さまざまな言語によるサポートも行っています。

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