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新たな産業集積モデルの構築を

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政府は地方創生の一環として企業の地方立地を促す意向を示している。今後、企業の地方立地は加速するのか。産業立地論を専門とする西武文理大学サービス経営学部の柏木孝之教授に、企業誘致の現状と課題について語っていただいた。

確実に進む物流施設の地方立地

西武文理大学教授
柏木 孝之(かしわぎ たかゆき)
昭和57年日本大学大学院生産工学研究科(博士後期課程)修了、工学博士。開発計画研究所代表取締役所長のほか、経済産業省、国土交通省の委員会委員など歴任。昭和63年文理情報短期大学助教授、平成13年西武文理大学サービス経営学部教授、平成20年西武文理大学サービス経営学部長、平成26年同教授、現在に至る。主な著書・論文として「日本型産業集積に明日は来るか」(同友館)、「21世紀初頭における地域産業振興の考え方」(人と国土)など

ここ数年の工場立地動向調査を見ると、地方に新規立地している施設の多くが物流施設である。多いときは7〜8割が物流施設で占められていることもある。

圏央道沿いでは国内の大手有名企業・外資などが大規模なロジスティックセンターを次々とつくっている。ただ、当該地域が活性化するには、ロジスティックセンターに情報センター的機能のような施設や機能がプラスされていると波及効果が高い。

今は高学歴の女性が郊外に住む例が増えている。情報センターができれば、そうした女性が働く場になりえる。データ収集・整理だと、仕事は深夜の時間帯になることが多い。そこで多くの女性が働くとなると、安全性をどう担保するかということが課題になる。産業環境条件として、夜間も照明で明るくするなどの方策が必要になるだろう。夜間が明るくなると、夜の人通りが増え、飲食店などもできるようになる。人の流れも変わってくる。そう考えると、ロジスティックセンターの増加は地域経済にとってプラスになる。

かつては、量産段階に入った製品の製造が地方に分散するというのが、日本型の産業集積モデルであった。けれどもバブル崩壊以降、韓国、台湾や中国の量産メーカーが急速に台頭し、そうしたモデルは説得力がなくなってしまった。そこで私は海外各国を見て回ったが、米国テキサス州の都市、オースティンで、新たに日本型産業集積モデルに応用できるものに出会った。

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