世界を揺さぶるトランプ金融規制緩和の衝撃 リスクマネーの膨張はバブルを招きかねない

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世界はリーマンショック前に逆戻りするかもしれない(写真:Tony / PIXTA)

1月20日のトランプ政権誕生から1カ月余りが過ぎた。時間の経過とともに、入国規制の大統領令が裁判所から却下され、フリン大統領補佐官(国家安全保障担当)はロシア大使と就任前に接触したとして、わずか2週間で辞任に追い込まれるなど、たとえ大統領とはいえ、すべてがトランプ氏の思いのままにはならないことがわかってきた。おそらく、政治経験ゼロのトランプ氏は、人生で初めて「誠実さ」を要求されていることに戸惑っているはずだ。

オバマ政権時代のレガシー、ドッド・フランク法

そんな状況の中で、2月3日に署名した「金融規制改革法(ドッド・フランク法)」の見直しに関する「大統領令」が注目されている。トランプ政権にはウォール街の出身者が数多くいて、入国規制政策を演出したとされるスティーブン・バノン首席戦略官兼大統領上級顧問、財務長官に就任したスティーブ・ムニューチン氏も元ゴールドマンサックス出身者だ。

ドッド・フランク法は、オバマ政権時代のレガシー(政治的遺産)のひとつで、1930年代の大恐慌に匹敵するといわれた「リーマンショック」からの反省で生まれた。2010年に成立し、金融機関の活動に対して一定の制限を設けることで「大きすぎて潰せない」といった状況を防ぐために制定された。簡単にいえば"バブル防止法案"だ。

同法の中核には、銀行などの自己勘定取引を禁止する「ボルカールール」があり、銀行の運用資産の効率化を図るために高いリスクを取って運用をすることを禁止している。デリバティブ(金融派生商品)や商品先物、未公開株式やヘッジファンドなどに莫大な資金を投入し、これまで荒稼ぎしてきたウォール街を代表する金融機関が、ドッド・フランク法によってその活動を大きく制限されている状況だ。

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