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仕事のモチベーションを上げる「大胆戦略」 『嫌われる勇気』の岸見一郎氏と
「第3回グッド・アクション」受賞企業に学ぶ

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たった1時間の事業部間"留学"もOK
積極的交流で社内ノウハウをシェア

現場発の取り組みが、社内のモチベーションUPに大きく貢献した例もある。

メディアやマーケティング事業、人材アウトソーシング事業などを行うレバレジーズは、全社員の約2割強に当たる120名を1年で採用するなど急成長を続けているが、その反面、部署を超えたナレッジの共有が課題に上がった。各事業部の中核メンバーが自主的に話し合い、「社内勉強会」や「事業部間交換留学制度」を起案。社内の風通しを良くし、ノウハウをシェアする施策として実施が認められた。

「毎回100名以上が参加しているという『社内勉強会』もすばらしいですし、『事業部間交換留学制度』もユニークな試みだと思います」と語るアキレス氏。同制度では、営業同行やミーティング参加など、最低1時間から他事業部に顔を出すことができる。

SAPジャパン株式会社常務執行役員人事本部長、横浜市政策局男女共同参画推進担当参与、NPO法人GEWEL副代表
アキレス美知子

「真面目にキャリアを考えていれば、他の部署は何をやっているのか気になるものです。でも、いきなり手を上げて覗きに行くのは勇気がいること。仕組みがあり、たった1時間でも他部署に行っていいという気軽さは、とても魅力的です。交流を深められますし、自分のキャリア形成における有益な知識や経験も得られます」

売り手市場であり、人材不足が慢性化する今日において、優れた人材に長く働いてもらうのは重要な課題だ。定着率の向上を図る人事の施策は成果が見えづらい場合も多いが、積極的に実施することが大切だとアキレス氏はいう。

「最終的には人事部が取りまとめますが、レバレジーズのように現場から生まれたアイデアをどんどん取り入れ、フィードバックを得ながら改善していくという軽快さも、企業には必要でしょう。そしてなにより、働く個々のモチベーションは企業経営にとって一番大事な部分です。上司が命令するから仕事するのではなく、自らやりたいと思う気持ち。そうしたモチベーションの火を灯し続けていくには、社員の力を信じて任せる企業文化が不可欠です」

個人の課題を傾聴していく姿勢が
モチベーションUPの端緒になる

「グッド・アクション」に表彰されたこれら企業のように、社員のモチベーションを高める秘策は、どのように生まれてきたのか。

守島氏は、これまで3回連続で携わった「グッド・アクション」の審査を通じ、工夫に満ちたモチベーションUPの動きが進化していることを感じたと話す。

「過去にも運動会や社内旅行、大規模な飲み会などがありましたが、今では思うような効果を得られなくなりました。働くスタイルや個人の嗜好が細分化されましたし、自分の貴重な時間を割いてまで参加しようとする人は激減したからです。そのため、ランチタイムを使ったコミュニケーション促進や社内SNSの積極活用など、さまざまな工夫が行われるようになっています。すべての社員をカバーできなくとも、可能な限り多くのニーズに対応できる施策を複数実施する。働き手が多様化してきたように、施策にも多様性が求められているのです」

大局的な観点からすれば、社員に"共同体感覚"や"貢献感"を持たせようという動きに、今も昔も変わりはない。しかし、そこへ至る方法は変化し、さらに多様化しているというわけだ。

「私は日頃、戦略的人材マネジメントの重要性を説いていますが、社員のモチベーションUPを図る上では、働く人のそばに寄り添うことがなによりも大切だと思うようになりました。昔は労働組合の力が強く、職場の先輩や上司との関係も密接で、頼りにできる存在が多くありました。しかし現在は、良くも悪くも関係が希薄化しています。業務の課題はもちろん、日々のささいな困り事まで聴いてあげる姿勢が企業にあれば、意欲もわいてくるはずです」

必要となるのが、傾聴のスキルだ。世代や役職、肩書といったラベルを見て型にはまった対応をするのではなく、その人の本心から発せられる言葉に耳を傾け、一緒に課題を解決していく。何を喜びとして働いているのを知り、応援する。

「人事施策は、マスに向けて対応してしまいがちです。それを認識した上で、出来る限り個別に対応できるよう柔軟性を持ってあたりましょう」

管理・監督する側の人事担当者は、規律に反するものがいないか、とかく厳しい目で社員らと対峙しがちだ。しかし働き方が多様化する今、人事担当者に求められるのは、労働と幸福を両立する道を示すこと。一人ひとりに耳を傾け、多彩な施策を通じて改善を図っていくことがモチベーションを高め、ひいては生産性の向上につながっていくはずだ。

表彰企業一覧

 
 
 
 
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[第2回表彰式] 第2回グッド・アクション表彰式に 日本企業の活力を見た
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[第1回表彰式] こんな会社、うらやましい。職場を元気にするグッド・アクション!
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