ジャパネット髙田明「東日本大震災時の決断」 自粛ではなく社業でこそ貢献できる

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一方で、いったんは番組自粛を実施しながら、本当に被災地のことを考えるなら、企業としての仕事をやり通したほうがいいのではないか、との考えも芽生えました。そして、震災から5日目の番組の一部再開を社内で提案しました。

再開といっても、普段どおりのテレビショッピングを提案したのではありません。テレビ1500台とランタン1000個を用意し、売り上げのすべてを義援金とするテレビショッピングを放送してはどうかと提案したんです。社内の皆が賛同してくれました。

3月16日、午前9時30分にスタートした番組の冒頭で、「売り上げの全額を義援金として被災地に送ります」と、視聴者にお伝えしました。被災地のために何かしたい、と考えてらっしゃる皆様の想いを寄せて、義援金をお送りしたいと訴えました。

すると、直後に、コールセンターがパンクするような事態が起こりました。それには本当に驚きました。商品の紹介が終わらないうちに、売り切れてしまったのです。このときほど、日本人の優しさを実感した時間はありません。

被災地のために何かしたいという気持ちは社員たちも同じでした。受注のために臨時のオペレーターを社内で募集しましたが、多くの社員が、無報酬でいいからぜひ受注の電話を受けさせてほしいと応募してくれました。

売り上げとは別に義援金5億円も寄贈

「被災地への気持ちは、視聴者の皆さんに届くだろうか」という不安がなかったわけではありませんでした。が、まったくの杞憂でした。復興を支援したいと思うなら、ただ活動を自粛してお祈りするのではなく、事業を通してできることを考えて取り組まなければ、本当の支援にはならないと確信しました。予定どおり自粛を続けていては、売り上げを義援金としてお送りすることはできませんでした。

ジャパネットたかたは、この日の売上総額7068万円のほか、日本経団連を通して社会福祉法人中央共同募金会に義援金5億円を寄贈しました。ジャパネットたかたで販売している充電済み充電式電池セット1万台も被災地にお送りしました。

5億円の義援金は年商1500億円の企業にとっては背伸びした金額だったかもしれませんが、支援の輪を広げる起爆剤になればと考え、決断しました。

2011年7月には、CSデジタル放送の専門チャンネル10周年を記念して、北海道から沖縄まで47都道府県をエールでつなぐ「日本全国エールリレー」を実施しました。締めくくりは、世界遺産登録で脚光を浴びている岩手県平泉町から中継を行いました。

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