退任前の大きな賭けに出た?バーナンキ議長 今後もあえて市場を動揺させ、バブルの芽を摘みとる?

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一方、スタイン理事は、日々発表される経済指標について、それを政策判断に反映させるタイミングを工夫すべきという。同理事によれば、QE3縮小の判断は、足元の情報を過度に重視することなく、経済・雇用情勢のこれまでの改善度合い(実績)と今後の進展(見通し)をベースに判断すればよい。一方、足元の情報については、その情報を蓄積した上で、将来時点におけるFOMCでの政策判断の際に活用していく。この提案に従えば、日々の指標に金融市場参加者が一喜一憂する度合いは減るだろう。

バーナンキ議長は、過去2カ月ほどの金融市場の動揺が、部分的にせよハイリスクなポジションの解消を反映したものとみている。7月10日以降、バーナンキ議長は次のような主旨の発言を繰り返すようになった。

「もし我々が(資産購入プログラムについて)何の発信もせずにいれば、金融市場は、我々の思惑からかけ離れた方向に向かっただろう。資産購入プログラムは永続的であると勘違いされ、もっと危険なポジションが積み上がっていたはずだ。」

バブルの芽を摘み取るための危険な賭け?

金融市場の動揺には望ましい側面があったということだ。“失言”の都合の良い言い訳に聞こえるが、最初から、金融市場にショックを与えてガス抜きを図ろうというバーナンキ議長の狙い、危険な「最後の賭け」であった可能性もゼロではない。

量的緩和策は長期金利を構成するうちのタームプレミアムを押し下げる働きを持つが、近年の研究では、タームプレミアムの低下は実体経済よりも金融活動、言わばマネーゲームにとって重要、という指摘も出てきている。

バーナンキ発言はこうした研究を背景に、「実弾」よりは影響が小さいであろう「口先介入」によって将来の禍根となるようなバブルの芽を小さいうちに摘み取っておこうとしたのかも知れないのである。次期議長に託された出口戦略の円滑な実施に向けて、バーナンキ議長が露払いの役目を果たした、とも言えるだろう。

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