トランプ政権が中国に「やらせるべき」こと アジア諸国は何を期待しているのか

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多数の国がかかわる問題の中には、米国のみの力では解決できないか、米中協力関係なくしては解決不可能なものもある。特に北朝鮮による核兵器やミサイルシステムの開発や、中東と南アジアの過激派によるテロリズム、また、第2次世界大戦後に敷かれた体制に取って代わる新たな機関や体制の台頭などは、米国だけでは対処できない問題である。

こうした中、新政権が対中政策において評価を得るのに、いくつかできることがある。1つは、オバマ政権が犯した間違いを「正す」ことだ。オバマ政権は、中国によるアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立に対して、「傍観する」という間違った反応を示した。しかし、トランプ政権がAIIBに加盟する意思があることを示すことで、米国はオバマ政権が犯した間違いを正す意向があることや、米国の利益が得られる場合においては中国と協力する意思があると示すことができる。

結果はどうであれ、米国の利益につながる

また、加盟の意思を示すことは、米国政府が中国と対等な関係を築けるという信頼につながり、アジア諸国の国々が中国政府によるインフラ投資に対する意欲を利用しながらも、中国の自国への影響力を限定的にとどめることができるという自信にもつながる。

いずれにしても、参加意思を示すことは、結果はどうであれ、米国の利益につながるはずだ。中国はおそらく米国の加盟に同意するだろうが、そうなったら米国はAIIBの運営に対する見識および発言権、同地域内における他国の信頼を得られることになる。中国が異議を唱えたとしても、ほかの加盟国(欧州の同盟国を含む)から米国を加盟させるよう圧力がかかることが予想される。どっちに転んでも、少なくとも加盟しようとしたことに対して評価を得られるだろう。

もう1つ、ブッシュ政権やオバマ政権にはなしえなかった、中国との2国間投資協定の早期締結を推し進めることも、トランプ政権の功績につながるだろう。この取引を成立させることは、(海外からの投資に対して閉鎖的な地域のきちんとしたリストを示すことによって、逆に海外投資にオープンな地域を明らかにすることができるなど)米国のビジネス界に重要な機会を与える役割を果たすだろう。また、中国政府や地方の高官による「後から決定を覆す」慣習に対するプロテクションにもなりうる。

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