BBCがフェイクニュース対策で新機軸 連載「リアリティーチェック」の狙い

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BBCは概して、あからさまな嘘とみなされるニュースの誤りを暴くことにリソースを向けることを避けてきた。たとえば、米大統領選の選挙運動期間中に拡散したあからさまな虚偽ニュースのひとつには、「ローマ教皇がドナルド・トランプを支持した」というものがあった。だが今後は、うさん臭い「オルタナティブファクト」(もうひとつの事実)にも焦点が向けられることになる。「我々はインターネット全体の事実確認などできない。事実確認は、記事の編集を中心にしたプロセスであるべきだ」と、アンガス氏は付け加えた。

リアリティーチェックのフォーマットは以前、EUレファレンダムに関連する国内ニュースにだけ使われていたが、のちに対象は拡大され、よりグローバルなトピックを取り上げるようになってきた。最近掲載された記事には、たとえば「リアリティーチェック:米国では数百万人が違法に投票したのか?」や「リアリティーチェック:米国と難民」などがある。

アンガス氏は、嘘を暴く取り組みが、国際的な競争力、とりわけ米国における競争力をBBCにもたらしうると考えている。BBCが米国向けに出すコンテンツは、英国とは異なり、商業的な面がより重視されている。「米国のオーディエンスはBBCニュースに目を向けつつある。なぜなら、ほかの国々は米国で起きていることをどう思っているのかという疑問が、つねに頭から離れないからだ」とアンガス氏。

量ではなく質を重視

チームは今後、読者のトラフィックとエンゲージメントの独自データを使い、リアリティーチェックで注力すべき対象を見極めていく。ただしアンガス氏は、注力の対象を示す指標として使うのは、クリック率(CTR)だけではないと強調する。現在、リアリティーチェックの掲載は1日に2本程度だが、今後は増える予定で、フォーマットもソーシャルプラットフォームで機能するものに拡張される。BBCはすでにFacebookライブ動画を頻繁に配信しているが、今後は、このツールを使って作るリアリティーチェック風の番組が増える可能性が高い。

とはいえ、重視するのは、量ではなく質になるだろう。「我々が目指すのは、スピード至上の量産ではない。提供する編集記事を丁寧に選んでいくことだ」と、アンガス氏は付け加えた。

Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)

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DIGIDAY[日本版]編集部

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