日本の投資家の「やっかいな病気」が再発した 外国人投資家は目先のドル円など見ていない

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では、なぜ日本株は今一つ冴えないのだろうか。過去の局面でもしばしば生じたことだが、国内投資家の間に「何となく上がらない気がする病」が再発しているのではないだろうか。

国内投資家が、「チャートから見ると、株価が上がらないように見える」「何か悪いことが起こるに違いない」と、何となく買いを積極的に行なわず、その間に外国人投資家に下値を上手にさらわれ、結局最後は上昇する、ということが過去によく起こった。

2月第2週(10日(金)に終わった週)の東京・名古屋市場の投資家別売買動向では、海外投資家が4週間ぶりに買い越しに転じた一方、個人現金、生損保、都銀・地銀、信託銀行(その背後には年金や公的資金)、投信といった国内勢は、軒並み売り越しとなっていた。

外国人投資家は「目先のドル円相場」など見ていない

実は、ちょうど今週辺りから春ごろにかけて、外国人投資家は日本に出張でやってきて、日本企業を取材する機会を増やす。そうした投資家が注目しているのは、円相場ではないし、ましてやトランプ政権の政策が日本に与える影響でもない。個々の企業の中長期的な経営方針や、工場や店舗などの現場における企業活動の実態だ。

このように「個別に有望企業を発掘しよう」という外国人投資家の姿勢に比べ、国内投資家は、特に足元は「年初の高値(日経平均で言えば終値ベースでは1月4日(水)の1万9594円、ザラ場ベースでは同5日(木)の1万9615円)を、何となく抜けないのではないか」という根拠の薄い「あきらめ感」がもやもやと漂っている。それが国内投資家の買いを控えさせ、その結果日経平均が上がらず、あきらめ感がさらに強まる、といった悪循環に入りつつあるようだ。

最終的には、世界経済の持ち直しが(トランプ政権がどうなろうと)持続するという、実態面の明るさがあきらめ感を打ち破る可能性が高い。前号の当コラムで述べたように、日本株で言えば、日経平均は夏場にかけて2万1000円を超える上昇基調に徐々に入っていくと、筆者は考えている。

ただ、過去も「何となく上がらない気がする病」は、本当の病気のようにこじれ、意外に長引くことがあったのも事実だ。直近にしても、特に今週1週間だけを展望すると、日米ともに企業収益の発表は一巡し、世界的にマクロ経済面や政策面で大きな材料も見込めない。したがって、当面は、株価の「大きな深押し」は見込みにくいが、脱力感が払しょくされるとも考えにくい。

今週の日経平均株価のレンジとしては、1万8900円~1万9300円と、躍動感に乏しい推移を予想する。ただ、こうした株価が低迷する時期は、中長期的な観点からは、海外投資家の姿勢が示すように、有望な個別銘柄の仕込み場とも言えるのだ。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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