金融政策にとまどう米・中の株式市場 中国政府はブッシュ政権に八つ当たり

米国と中国の株式市場では、政策金利引き上げをめぐって投資家心理が混乱している。米国の株価も中国の株価も、今年前半は散々なパフォーマンスに終わった。

米国のダウ平均(ダウ工業株30種平均)は6月末の水準が1万3500ドルと、前日の年初来最安値から若干の上昇となった。しかし、この水準は、いわゆる「弱気相場(ベア・マーケット)」入り寸前なのである。

ウォール街では直近の史上最高値から20%以上下落すると、弱気相場入りと定義づけている。それに従えば、直近の史上最高値は07年10月9日の1万4164ドル。それから下落相場が続き、2割下落した水準の1万1331ドルを、6月27日のザラ場で既に割り込んでいた。

一方、中国の株価(上海総合指数)は米国以上の急激な下落を続けている。6月30日の終値2736.10は年初来最安値なのだが、史上最高値が07年10月16日の6092.06だったのと比べて実に55%もの下落となっている。

ウォール街風に弱気相場入りの時期を見ると、既に2月22日に2割安の水準4873.65を大きく割り込んでおり、それ以後4ヵ月も下落が続いた。その間に時価総額は1兆2000億ドルも減少したが、これはインド株式市場の時価総額に匹敵する規模だ。

米国連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は06年2月1日の就任当初から、グリーンスパン前議長流の金利引き下げによる株価支援政策を否定してきた。昨年夏に勃発したサブプライム問題による信用不安沈静化のための政策金利引き下げも、6月25日の連邦公開市場委員会(FOMC)で停止。今後はインフレ抑制に重点を置くと宣言した。 そのため、次回8月5日か9月16日のFOMCで金利引き上げが始まり、株価に打撃を与えるとみられている。

しかし、バーナンキ議長が金利引き上げに動けるかどうかは微妙なところだ。7月には民主党、8月には共和党の全国大会があり、大統領候補が正式に決定される。それを避ければ次のFOMCは11月4日の大統領選挙1週間前の10月29日。大統領選を政治的に意識してFOMCの決定が左右されることはないが、物価が小康状態となって8月と9月に利上げが見送られれば、12月16日まで金利引き上げはないとの希望的観測も流れている。

公定歩合引き上げに踏み込めない中国中央銀銀行

中国の証券監督管理委員会(CSRC)と中国人民銀行(PBOC=中央銀行)は、ともに深刻な問題を抱えている。

CSRCは株価の「安定」に責任を持っており、株価危機に際しては、かつての日本の大蔵省(現在の財務省)を彷彿とさせるPKO(プライス・キーピング・オペレーション=株価維持活動)を展開する。今回の株価下落局面でも4月に出動したが、これまでのように株価押し上げはできなかった。

このため、投資家の関心は完全にPBOCの動向に移っている。株価急落の原因は物価の高騰に対処するための強烈な金融引き締めの継続にあるため、毎週末には公定歩合引き上げ発表があるのではと戦々恐々としている。

PBOCの周小川総裁としても、人民元の対ドル為替レート引き上げと通貨供給量の抑制で一刻も早くインフレ率を引き下げ、株価にとって劇薬となりかねない公定歩合引き上げには踏み込みたくない。金利を引き上げれば、人民元が投機筋によって急騰する恐れがあるから、なおさら慎重になっている。

外貨準備の急増ぶりから推測して、中国には今年1~5月に1700億ドルの投機資金が流入し、株式市場ではなく、ドル建て資産より有利な人民元建ての銀行預金となって、人民元のさらなる上昇を待っている。この預金増が通貨供給量の増加にもつながっているから、周総裁としては簡単に公定歩合引き上げに踏み切れないのが実情。温家宝首相は低金利・ドル安を止めきれないブッシュ政権に八つ当たりを始めている。
(熊野政晴 =東洋経済オンライン)

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