誰も降りない「秘境駅」を存続させる町の狙い 維持費を負担してでも残したいワケは

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「最終的には地元の人たちとの交流なのかな、と思っています。体験型、ガイド型の観光ですね。秘境駅に行こうと思って幌延に来てくれた人が、地元の人と交流して『ああ、あのおばあちゃん元気かな、また会いたいな』と思ってくれる。『おじさんにとても良くしてもらったから、今度は友達を連れて遊びに行こう』と思ってくれる。秘境駅を通じて、そのきっかけづくりをしていくしかない。そのためには、地域の人たちの協力が不可欠なんです」(山下さん)

これまでも、秘境駅で早朝からクリスマスパーティーを行ったり、普通列車と徒歩を併用した秘境駅ウォーキングラリーを開催するなど、駅を利用したイベントには積極的に取り組んでいるという幌延町。その中で、町内の宿泊施設に泊まってもらったり、飲食店を利用してもらうことを促している。また、宿泊を伴うイベントの際には必ず前日に地元の人との交流会をセットしているという。こうして得られた地元の人との“交流”がリピーターを生み出し、ひいては移住促進にもつながっていく。

秘境駅の維持費は町の「広告費」

「秘境駅というのはある意味でPRのツール。イベントを行うのも、幌延町を知ってもらうための発信ツールなんです。そこからどうやって町に来てもらうか、住んでもらうか。ですから、秘境駅の維持やイベントの開催コストはいわば“広告費”ですね。そこから次につなげていかないといけない。ただ、残念ながらその“次”の部分が充実しているとはまだ言えません。それでも待っていては何もはじまらないので、秘境駅というツールがあるならそれを使ってアピールしていこうということですね」(山下さん)

豊浦町もこうした“秘境駅を次につなげる”ことに対する悩みは同様だ。

「小幌という駅は豊浦にある”日本一”ですから、これをアピールしない手はありません。我々が東京に行って宣伝するよりもよほど効果がありますから。でも、今は観光客の受け皿になる組織がない。そこで観光客を受け入れる体制づくりに取り組んでいるところ。個人旅行や旅行会社が作ったプランで来てもらうだけではなく、地元が考えた豊浦の魅力を発信できるツアーを提案していきたいと考えています」(小川副町長)

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