グローバルエリートが参院選を分析してみた ギリシャのエーゲ海からはるばる寄稿

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賢くなって帰ってきた安倍氏の、不健全な悲願

さて、今回安倍氏はさすがに前回執権時より賢くなっているのが見て取れる。途中で本性を現して安倍カラーで暴走をする兆しを見せたが、橋下氏の維新を他山の石とし、また世論調査で安倍カラー政策への支持が今一つとみるや、それらの“本当にやりたい政策アジェンダ”を引っ込めて経済政策に集中して参院選も楽勝のムードである。

経済政策は竹中平蔵氏など非常に優秀なブレーンの補佐を受けており、経済政策的には正しい方向に向かうだろう。そして経済政策の改革路線の人気を借りて政権後期で歴史認識の修正主義や再軍備への道筋をつけ、最後の年に最後っ屁のように靖国参拝して首相交代、という展開が目に見える。ただし最後の年だけ靖国参拝を強行するのは極めて無責任で、その尻拭いを次期政権と次世代に押し付けることになる。参拝するなら選挙で問うて、任期中全て参拝してその結果の責任を引き受けるのが筋ではないだろうか。(まぁ、政治家に“筋”など関係ないのかもしれないが。。)

後に安倍カラーへの批判が高まっても首相が代わればいったん落ち着くが、通ってしまった法案はそのまま“息のかかった後継首相”がいる限り静かに引き継がれ、次世代が安倍氏の極端な歴史教育や再軍備政策の後遺症に苦しむことになるだろう。

参院選大勝後に国民が望む政策とは

他にも生活の党とかみんなの党とかいろいろあるのだが、特に言いたいこともないので、今回の所感からは割愛する。参議院は意味がなく不要だと言われがちだが、唯一意味があるとしたら憲法改正へのハードル設定だ。衆院選だけだとその時のセンチメントで政党が大勝したり大負けしたりするので、衆院だけで憲法を改正できるとなると改憲が極めて流動的になる。安倍氏におかれては、大勝しても有権者が望んでいない政策をどさくさに紛れてねじ込むのではなく、謙虚に、国民に約束した議員削減など政治家にも痛みの伴うリストラを断行してほしい。

そもそも参院はいらない議会という説もあり、いらない議員を多額のコストをかけて選ぶのか、という皮肉な側面もある参院選なのだが、“当選したあかつきには、自分たちを首にします!”という参院議員がいるわけもなく、今後もこの謎の二院制は莫大な社会的コストと共に生き残っていくのであろう。

ムーギー・キム 『最強の働き方』『一流の育て方』著者

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Moogwi Kim

慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事。その後、大手コンサルティングファームにて企業の戦略立案を担当し、多くの国際的なコンサルティングプロジェクトに参画。2005年より外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして株式調査業務を担当した後、香港に移住してプライベート・エクイティ・ファンドへの投資業務に転身。英語・中国語・韓国語・日本語を操る。著書に『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』と『一流の育て方』(母親であるミセス・パンプキンとの共著)など。『最強の働き方』の感想は著者公式サイトまで。

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