同性愛カップルが隠れトランプになった事情

行き過ぎた平等の追求が米国を分断した

この会で会う人のなかに、長女が通う小学校の保護者でもある同性愛者のカップルがいる。米南部出身で敬虔なクリスチャンの両親をもつ弁護士のマイケルさん(仮名)と、カナダ出身でアーティストのジョンさん(仮名)だ。彼らが養女を迎えたのは数年前のこと。同じ学校に通う子どもの親同士ということもあり、彼らとは自然と話す機会が多くなった。正確に言うと、ジョンさんはカナダ人なのでトランプ大統領には1票を投じてはいない。投票したのはマイケルさんだけだが、いろいろ考えれば考えるほど、カップルとしては民主党のクリントン氏にはとても投票できなかったと話してくれた。

世間で言われる常識からすると、同性愛者である彼らは、トランプ支持から最も遠い存在のように思える。もちろん彼らはトランプ支持者ではない。しかしそれでも苦渋の選択をしなければならなかった理由は、ほかでもない娘への「愛」であった。ゲイのカップルとして親になること、娘を守るために彼らが選択をしたことへの覚悟を知れば知るほど、血のつながりをも超越する絆を紡ごうとする彼らの愛の深さや、人としての崇高さに敬服する思いになった。

なぜ彼らはトランプに投票したのか。彼らが守りたい「愛」とは何なのか。この疑問を追求しようとすると、トランプ大統領が嫌われた理由と、支持された理由が微妙にリンクする米国社会の「皮肉」を見ることができる。それが米国の「今」を知るには見逃せない問題のひとつ、「ポリティカルコレクトネス(Political Correctness)」である。

「ポリティカルコレクトネス」とはなにか

「ポリティカルコレクトネス」とは、米国で非常に重要視される公平、中立、差別、偏見がない表現を心がけるという考え方だ。それらを傷つけるような発言は、人として口に出してはいけない風潮がある。

トランプ大統領は大統領予備選、選挙本選当初から、イスラム教蔑視、女性蔑視、メキシコ人蔑視などの「暴言」を吐き続けてきたわけだが、それらの「暴言」が問題視され、非常に大きな騒ぎに毎回なる理由の1つには、こうした社会背景もあるといえる。米国では通常、トランプ大統領が発してきたような暴言というのは「決して言ってはならない」ことなのだ。

たとえば、極端な例を挙げると、いすに座れないほど太った人に、「太っているのは体に悪いから食生活に気をつけて運動したほうがいい」と忠告した医師が、心が傷つけられたという理由で訴えられることも起きるのが「米国社会」だ。イスラム教徒が服を着たままスポーツジムのジャグジーに入ってきたのを注意すると「人種差別」になるからとこわがって誰も注意できず、入っていた自分たちが仕方なく出る経験を話してくれた友人もいるが、日本ではあまり考えられないようなことも、米国での日常にはあふれている。

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