埼玉県「ヘリ救助5万円」、無謀な登山抑止へ

1回の出動で使うヘリの燃料代相当

負傷者救助の訓練を行う埼玉県防災ヘリコプター(10日、埼玉県本庄市で)

埼玉県内で山岳遭難した登山者が県の防災ヘリコプターで救助された際、5万円程度の手数料を徴収する県の条例改正案が同県議会で審議される。

同県には手軽なハイキングコースが多く、「日本百名山」も三つあり、徴収は無謀な登山を抑止するのが目的。改正案を提出する県議会会派によると、公的なヘリの救助に手数料を設定する条例は全国初という。

20日開会の県議会2月定例会に提出されるのは、防災ヘリの運用などに関する条例の改正案。最大会派の自民党県議団が提出する。

県の防災ヘリは3機あり、山岳救助に年間10~35件程度出動している。隊長などの幹部を含め、市町村の消防本部から派遣された18人が救助隊員を務めている。操縦は民間に委託しているという。

5万円程度の手数料は、1回の出動で使うヘリの燃料代相当だ。知事の告示で、山岳救助隊や林業従事者の搬送を対象から除外し、2018年1月の施行予定。同県議団の田村琢実政調会長は、手数料徴収の目的を「少しでも負担を求めることで、無謀な登山者を減らしたい」と説明する。

同県では10年7月、県の防災ヘリが秩父山中で山岳救助活動中に墜落し、乗員5人が死亡する事故が発生した。同県議団では当時、1回の飛行経費を含めた数十万円の徴収を想定した条例化の動きが出たが、「登山客の減少につながる」との声が上がり、条例案提出には至らなかった。

航空法では「他人の需要」に応じ、人や貨物の有償輸送を航空機で行う場合、許可が必要になり、手数料徴収には課題もある。国土交通省航空事業課は「名目は何であれ、料金を取れば『有償』と判断される可能性がある」と指摘している。

山岳遭難件数が全国一の長野県では04年、当時の田中康夫知事が救助ヘリ有料化を検討したが、観光面への影響や許可の問題などから実現しなかった。

埼玉県議会自民党県議団の田村政調会長は「行政コストとして請求する燃料代の実費。航空法上の『有償』にはあたらない」と主張している。

総務省消防庁によると、山岳救助にかかわる消防防災ヘリの出動は増加傾向にある。2015年の全国の出動件数は1345件で、11年の921件の約1.5倍に達した。

同庁によると、出動費用は都道府県などの予算から出ており、「山岳救助は公的行政サービスで、救助した人に請求することはなく、実際に料金を取った事例もない」という。

全国の警察本部も救助要請があれば、警察ヘリを出動させているが、燃料費などの負担は求めていない。警察ヘリは、国民の生命を守る責務を定めた警察法に基づいて出動しているためだ。

一方で、「疲れた」など緊急性がない救助要請も多いのが実情だ。軽装で登山して救助を求めたり、安易に登山したものの足がすくんで動けなくなるケースもあるという。

日本山岳ガイド協会の武川俊二常務理事は「金額を明示した上で、一定の燃料代を徴収すれば、安易な救助要請を抑止する効果はあるだろう。ただ、必要な救助要請をためらうようなことにならないようにすべきだ」と話した。
 

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