弁護士が語る「悪賢い成功者」の悲惨な末路 1万人の人生からわかった強運な人の共通項

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「自分のためになるのだから、どんどん、他人に優しくしなさい」ということわざです。つまり、人の役に立つことをすると運が良くなるという意味になります。

私の経験則からいっても、これはまったく正しいと思います。

しかし、「それはきれいごとで、現実にはあてはまらないのでは?」と思われる方もいるかもしれません。現実の社会を見ると、人の役に立つどころか悪いことばかりしている人間が、お金持ちになったり出世したりしているように見えることも多いでしょう。

悪いことをして得た成功は長続きしない

たしかに、悪賢く立ち回って成功している人はたくさんいます。しかも、そんな人は派手にぜいたくをしがちですから、目立ちます。

ですから、世の中にいる成功者は、そんな人ばかりなんだと思われるかもしれません。

けれど、普通の人たちは、「うまくいった」という話ばかり聞かされがちです。その後どうなったかはフォローしませんし、あまり耳に入ってこないから、少々錯覚されていることが多いと思うのです。

その点、弁護士は逆で、世の中のうまくいっていない人を多々見ます。弁護士が必要になるような争いがあるときは、うまくいっていない場合のほうが多いものです。

つまり、普通の人は成功した話しか耳に入ってきませんが、弁護士は失敗している人についてよく知っているわけです。そして、悪賢い成功者がその後どうなったかについての話もよく知っているのです。

結論をいえば、悪いことで得た成功は長続きせず、すぐに不幸になってしまうようです。

事業で失敗して弁護士に相談に来る人の多くは、実はほんの少し前までは成功者だった人たちなのです。頭を使ってうまくおカネを儲けたり出世したりしたのに、その成功は長続きせずに、しばらくして失敗し、窮地に追い込まれる場合が非常に多いのです。

そのことを、弁護士はよく知っています。「天網恢恢疎(てんもうかいかいそ)にして漏らさず」ということわざもあります。悪いことをすると、必ず人知の及ばぬところにいる神さまが見ていて、罰を与えるぞという戒めの言葉です。

悪いことをして得た成功は、長い目で見れば一瞬だけのことです。本当の幸運は、一瞬だけでなく、長い目で見ないとわかりません。

悪いことで成功を得た人の末路を数多く知る弁護士のいうことです。どうか、参考になさってください。

西中 務 弁護士

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にしなか つとむ / Tsutomu Nishinaka

1942年大阪市淀川区生まれ。大阪府立北野高校、大阪大学法学部を卒業後、会社勤務を経て25歳で司法試験に合格。以来、半世紀近く弁護士として、民事、刑事のさまざまな事件を経験。依頼者はのべ1万人を超える。本書で紹介する出来事をきっかけに、弁護士でありながら「争わない生き方」の重要性を痛感。人との縁を大切に考え、毎年出す暑中見舞いと年賀状は2万枚にのぼる。現在はエートス法律事務所に所属。社会貢献活動として、法律事務所の1階をセミナールームとして無料で一般に貸しているほか、老人ホームでの傾聴ボランティアなども行っている。「いのちの電話」の相談員も10年間務めた。著書に『ベテラン弁護士の「争わない生き方」が道を拓く』(ぱる出版)がある。

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