参院選で「アベノミクス」に一段の追い風 自民圧勝なら株価は一段高も

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焦点は与党の勝ち方

為替市場では、6月の世界的なマーケットの混乱でポジションを一斉に整理し、キャッシュを手にした市場参加者の中に、新たに投資資金を振り向ける「優良資産」として日本株やドル/円に照準を定める向きがあったとされている。与党の勝利で「長期政権になれば、政策がやりやすくなるという期待感がある。日経平均は上がりやすい」(大手邦銀)とし、ドル/円は日経平均に連動すると予想しているようだ。

自民・公明両党が過半数を確保するとの結果はすでに織り込み済みとの見方もある。注目はメディアの情勢調査で優勢が伝えられている自民・公明両党の勝ち方だ。岡三証券・グローバル金融調査部長の保科雅之チーフ・エコノミストは、「『生半可な勝ち方』では相場には織り込まれている」として、選挙直後に円安に振れるには自民・公明両党で安定多数を確保する、自民党が単独過半数を制するなどの結果が必要だとみている。

円金利のトレンド変化は秋以降か

円債市場は、自民党が歴史的な圧勝を収めた昨年12月の衆院選直後にみられた金利上昇のシナリオを描く参加者は少ない。「海外勢はむしろ、新興国リスクや再燃する欧州不安、米国の緩和縮小観測に揺れる米国市場など海外情勢に関心が向いている」(外資系証券)との声も聞かれる。 ソシエテ ジェネラル証券東京支店・シニア円債ストラテジストの菅原琢磨氏は参院選後の円債動向について「当面は明確な方向感が出ないのではないか」との見通しを示す。仮に金利が上がる局面があっても、4月以降国債投資を手控え、余剰資金を潤沢に抱える投資家の買いに相場は支えられるとの見方をしている。

与党が圧倒的な勝利を収めた場合には、「政府・日銀が一体となった政策運営が一段と強まるのではないか」(国内金融機関の債券関係者)として、2年で物価目標2%達成が難しくなれば、日銀による国債買い入れを中心としたさらなる緩和強化の思惑も浮上しやすい。 SMBC日興証券・チーフ債券ストラテジストの末澤豪謙氏は「政治リスクが払しょくされることで海外投資家による日本株投資が再び積極化する可能性も考えられる。債券市場にとって、政権の安定は日本国債の格付けなどにとってはプラスであり、当面、債券市場への影響は限定的となりそうだ」と指摘。国債市場に変化がでるとすれば、消費増税の閣議決定や総合経済対策の策定と米国の金融政策や財政問題の帰すうが明らかになる秋ごろとみている。

(星裕康 杉山容俊 和田崇彦;編集 北松克朗)

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