商社独り勝ち批判なんてマスコミが言っているだけ−−丸紅会長 勝俣宣夫

商社独り勝ち批判なんてマスコミが言っているだけ−−丸紅会長 勝俣宣夫

今や独り勝ち批判さえある総合商社だが、数年前の丸紅は危機に瀕していた。2002年3月期に1164億円の最終赤字を計上し、株価は倒産株価をはるかに下回るところまで暴落。それから5年、資源高や新興国の成長を追い風に、丸紅は5期連続の最高純益を更新中である。総合商社で初めて非営業部門出身の社長を後任指名し、この4月に会長に就任した勝俣宣夫会長が、復活の軌跡と社長の条件を語る。

--丸紅の社長に就任されたとき、株価は111円でした。それが今年3月末は726円まで上がった。この上昇率は三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事といったどの総合商社よりも大きいですね。

それはウチがもっとも潰れそうな会社だったということ。かつて格付けは投資不適格、財務体質も収益力も苦しく、01年12月に株価が58円まで落ちた。他商社さんは、そこまで落ち込んでいかなかった。

なぜ丸紅がそこまで落ちたか。1990年代まで、商社のビジネスのベースは仲介口銭。それが、商社を“中抜き”する動きが広がって収益力が低下。だから新たなビジネスモデルをつくろうとして各社ともハイリスク、ハイリターンに走った。その一方で、どの商社もまだいい資産を持っていて、その資産を売ることで収益を出していた。しかし、90年代後半、アジア危機をはじめ経済環境がさらに悪化し、それまでの投資が不良債権化した。他商社はかなり早い段階で不良債権を断ち切ったが、ウチはできなかった。不良債権処理して大きな損失を出すと、財務体質がめちゃくちゃになるからです。

結局、丸紅は辻(亨)社長時代の01年度に2000億円ぐらいの損失を計上して、ハードランディングに踏み切った。その際、02年度に純益300億円を出してV字回復しますと(株式)マーケットに訴えたが、格付けも下がり、金融機関に不安が広がった。株価が58円になっただけではなく、社債も額面の25%安まで下落した。そこが出発点ですから、戻りが大きく見える(笑)。

--当時、本当に丸紅が倒れるという危機感はあったのですか。

われわれはそういう部分は出さなかったつもりですが、社員の間にさえ、そんな収益は出るわけはないとか、まだ不良債権があるのではないかといった疑心暗鬼や閉塞感が漂っていました。

--どう危機を脱したのですか?

02年度に立てた改革プランを03年度からスタートさせました。リスク・リターンを導入して、それまでどんぶり勘定だった投資基準やイグジットルールを厳格化。また、連結経営を明確にして、それまで関連事業部が見ていた事業会社を(所轄の)ユニットが直接責任を持つようにした。そのうえで、部門別経営会議でユニット長と経営が直接話をするようにした。それまで5~6月にやっておしまいだった部門別経営会議を11月~12月にも行い、結果をモニタリングするようにもしました。

こうした経営システムの変更に加えて、社員の意識改革のために会社の現状を全部オープンにしたのです。すなわち、まだ不安な資産はこれだけあります、と社員に伝えた。

--オープンにしすぎると、誤解によって必要以上に不安が広がると恐れる経営者もいます。

みんなの閉塞感を打破するには、そんなことは言っていられなかった。危機意識と情報を共有することで社員が一丸となり、ようやく業績数字が出てきた。そうした正のスパイラルが生まれてきたとき、資源の高騰や世界経済の成長がフォローの風として吹いたのです。

--丸紅は復活したが、上位商社も伸びたので業界5位は変わらない。ほかの業界だったら、5位では単独での生き残りが難しいですよね。今も危機感はありますか。

総合商社は日本にしかない。だから世界で5番目だとも言えます。総合商社は成長する国にどんどん進出して、投資して、バリューチェーンを築いている。世界中の産業と関係を持ち、日本企業とだけではなく、どこの国の企業とでも組む。ファイナンスも含めてやっていける。5番目だからダメだという危機感は持っていません。

また、それぞれの商社に強い国、分野がある。たとえば丸紅は紙パとかです。ここ何年かの投資は、われわれの強い分野に投資している。産業の隆盛、国の隆盛には変化があるし、今持っている資源権益は毎年減退していくけれど、投資した権益が新たな収益を生むかどうかで、商社の順位が逆転する場合もある。どういう手を打ち、花が咲くかどうか。

総合商社のビジネスモデルは、われわれも他社も同じです。何が違うか。財務体質が違う。資産規模が違う。だから、ROAの数字が同じでも、利益の絶対額が違う。それでも投資基準、リスクマネジメントといった経営システムをきちっとやり、その時々で正しい経営判断をしていけば十分だと思います。

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