西武の新型車両は「通勤電車」を変えるか 「最も進化した通勤車両」会長も太鼓判

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中吊り広告の代わりに設けられたデジタルサイネージ(撮影:尾形文繁)

今回の40000系で注目される点の一つが「中吊り広告の廃止」だ。車内広告用にデジタルサイネージを大々的に取り入れたJR山手線の新型車両、E235系では行われなかった中吊りの廃止が、西武40000系では実現することになった。車内には、線路と直角方向となる通路上に17インチのディスプレイを1両あたり12~16面設置。ドア上に設置した分も合わせると、10両編成で計236面のデジタルサイネージを設置している。

中吊りを廃し、ディスプレイを通路上に直角に並べたのは、クロスシート状態の際に視認性が高いためだ。同社は車内のデジタルサイネージを「Smileビジョン」と名付けており、これまでの最新型車両である30000系と、地下鉄乗り入れ対応車両の6000系に搭載しているが、これまではいずれもドア上のみだった。

広告は、2017年度については40000系2編成(20両)を2週間単位で1社借り切りとして販売する予定。左右2つの画面を連動させ「たとえば左側でボールを投げて、右側で打つといった映像も可能」といい、さまざまな広告展開が考えられそうだ。

「全部入り」は今回の2本だけ?

40000系は、今のところ10両編成8本が導入される予定。西武によると、パートナーゾーンは全編成に設置するが、今回のような「全部入り」仕様は最初の2本だけで、残る6本のうち4本は「ロング・クロス転換シート」は装備するものの、車内広告はデジタルサイネージではなく通常の中吊り広告に戻る。さらに残る2本は、座席も全て通常のロングシートになる予定という。今回の2編成は一種の「特別仕様」なのだ。

40000系の前で報道陣の質問に答える西武鉄道の後藤会長(撮影:尾形文繁)

「最も進化した通勤電車と自負している」と、後藤会長が太鼓判を押す40000系。ある鉄道会社の関係者は「40000系には非常に注目している」といい、業界内でもその新機軸の数々や、地下鉄をはじめとする他社線に乗り入れる座席指定列車「S-TRAIN」の運行に対する関心は高いようだ。

「西武はこれまでも『選ばれる沿線』になるべく、朝ラッシュ時に特急を増発するなどのサービスの向上を行ってきた」という後藤会長は「快適な通勤電車、座れる通勤電車は時代の要請」だと語る。大量の乗客を「運ぶ」手段から、快適で「乗る楽しさ」の感じられる乗り物へ。西武の意欲作といえる40000系、そして「S-TRAIN」は、今後の通勤電車のあり方を変えていくだろうか。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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