鳥貴族だけが激安・均一戦争に大勝した意味 大手居酒屋優位の構造はこうして変わった

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低価格戦争の中でも「鳥貴族」が強かったのはなぜか(撮影:今井 康一)
全品280円均一(以後、価格は税抜きで記載)という低価格ながら高品質で特徴のあるメニューを取りそろえ、競合の追随を許さない居酒屋チェーンを展開する「鳥貴族」。外食業界を30年以上にわたって取材してきた筆者がその正体に迫る短期集中連載の第3回は、リーマンショック後の不況期に居酒屋業界で吹き荒れた激安・均一価格戦争の意味と鳥貴族の立ち位置を振り返る。(編集部)
第1回:「鳥貴族」がワタミをついに追い抜いた理由(2017年2月14日配信)
第2回:「鳥貴族をつくった男」の知られざる悪戦苦闘(2017年2月15日配信)

不況期に激安居酒屋が次々に開業

居酒屋チェーンは2008年秋に起きたリーマン・ショック後の不況期に客数減、売上高減に苦しんだ。そんな中で立飲み業態や激安居酒屋を次々に開業した。

その中心になったのが、「東方見聞録」「月の雫」などの個室居酒屋を展開する三光マーケティングフーズ(以下三光MF、本社東京・池袋)だ。店舗展開の特徴は新宿のような大繁華街に多業態を集中出店、業界トップの8000席を確保し、集客競争を優位に運ぶという手法である。

創業社長である平林実(現名誉顧問)は、主力の個室居酒屋が軒並み前年割れするのを見て、「何か手を打たなければ大変なことになる。思い切って客単価3000円以上の既存業態を、客単価2000円台の低価格・均一料金の業態に衣替えしよう」と決断した。

2008年12月、平林は低価格・均一料金の実験店として、「熱烈酒場 金の蔵Jr.」川崎駅前店などを3店舗同時にオープンした。厨房設備や店舗運営システムの機械化、IT(情報技術)化などを推進、人員を削減し、生産性を高めた。

当時平林は鳥貴族が2005年に東京へ初進出後、「全品280円均一」業態で大手居酒屋チェーンに価格競争を挑み、連戦連勝していたことを意識していたようだ。大阪はともかく関東の居酒屋市場には鳥貴族のような価格破壊業態は皆無だった。平林は鳥貴族に対抗できるような均一価格の店を作ろうとしたのだ。

次ページ店舗運営をIT化し、「全品270円均一」業態に転換
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