大塚家具、過去最悪の赤字で迎える「正念場」 路線転換が消費者に「低価格」の印象を与えた

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東京・有明本社ショールーム。2月10日からリユース店を併設した(記者撮影)

「私たちは低価格路線に走ったわけではない。ニトリやイケアと競合しようとしているわけではないんです」。決算会見後、大塚久美子社長の発言が会場に響いた。

創業者の父と娘が対立した末、2015年3月の株主総会で娘の久美子氏が経営権を握った大塚家具。同社は2月10日、2016年度(1~12月)の決算を発表した。売上高463億円(前年比20.2%減)、営業損益は前期の4億円の黒字から約46億円の赤字と、創業以来最大の赤字に転落した。

路線転換が裏目に

大幅な赤字の要因は、ともかくも売上高の減少が止まらないことにある。久美子社長は父・勝久氏が作り上げたビジネスモデルと決別。店舗の入り口で受付を行い、会員向けの丁寧な接客を強みとしていた高価格路線から一転、自由に店内を見て回れる「入店しやすさ」を重視した店作り、接客方法を導入した。

だが、今のところ、路線転換の成果は出ていない。東京・銀座などの路面店の入店客数は回復傾向にあるが、商品の買い上げになかなか結び付かない。大型店では接客方法の変更によって、まとめ買いが減少したことも響いた。商品別では主力となる応接セットやダイニング家具・寝具の売り上げが前年比2ケタも減った。

久美子社長は「これまでの(同社の)ポジショニングが崩れたのが昨年の誤算」と分析する。「高額品だけでなく商品の幅広さを伝えるはずだったのに、店舗オープン化の路線転換が低価格へのシフトという形で消費者に伝わってしまった」(久美子社長)。

路線転換の後、需要喚起のために行った大規模な「お詫びセール」も、消費者に低価格というイメージを植え付けた原因となったのかもしれない。

自分の目指す路線が消費者に伝わらないもどかしさ。その忸怩たる思いが、「ニトリやイケアとは競合しようとしているわけではない」という冒頭の発言につながったようだ。

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